↑図お茶の種類の一覧
お茶のほぼすべての種類をわかりやすく図にしました。
※そもそも、お茶とは、ツバキ科の植物で学名「カメリア・シネンシス (Camellia sinensis)」という木の葉っぱを使った飲料(食品)です。ツバキ科なので、椿の花に似た白い花を咲かせます。
「茶」と名前のつく飲料、例えば、「麦茶」や「ルイボス茶」、「グァバ茶」などは、カメリア・シネンシスの茶葉ではないため、厳密にいうと茶ではないのです。強いて言うなれば、お茶風の飲料です。しかし、お茶というと日本茶だけを思い浮かべるかもしれませんが、緑茶だけでなく、烏龍茶や紅茶などは、同じお茶の葉(カメリア・シネンシス)を使ったものなので、全てお茶に分類されます。
カメリア・シネンシスを大きく2つに分けると、中国雲南省辺りが起源とされる中国種、アッサム地方起源とされるアッサム種があります。アッサム種は、葉も大きく、長さが20~30㎝になるものもあります。渋みが強めです。中国種は、数センチから10センチ程度のものが多く、主な日本の茶も中国種に分類されます。
お茶(印※1)は、大きく、※2不発酵茶(緑茶)、※3半発酵茶(烏龍茶)、※4発酵茶(紅茶)、※5後発酵茶(プーアル茶)など、発酵の度合いや方法で分類されます。
・詳しくは、「日本茶、烏龍茶、紅茶は同じお茶の葉から作られる」を参照ください。
日本茶(緑茶)の種類
図の※印ごとに解説
※6蒸し製法:日本茶独特の製法
日本で生産されるお茶のほとんどは、不発酵茶の緑茶です。緑茶の種類は大きく、「蒸し製」と「釜炒り製」がありますが、日本茶のほとんどは、蒸し製法になります。(釜炒り茶の生産割合は、全体の1%以下と ごくわずか。)
お茶の葉は、摘んでそのままにすると酸化酵素が働き、酸化発酵が進んでいきます。日本茶(緑茶)は酸化発酵が進まないように、摘んだ葉をすぐに蒸し、熱で酵素の働きを止めます。蒸した後に揉んで乾燥させます。
工程:蒸す(蒸気をあてる)→粗揉(かくらん)→揉捻(しっかり揉む)→中揉(乾燥させつつ揉む)→精揉(煎茶の形に整える)→乾燥→荒茶の完成
参考:下図 お茶の機械
蒸し機 | 揉捻機 | 精揉機(煎茶) | 再乾機(玉緑茶) |
荒茶が出来上がると、元の生葉の約5分の1の重さになります。
※7露地栽培・ 被覆栽培
お茶を摘む前の茶畑をご覧になったことはありますか?黒い覆いが茶畑一面に被せてある光景を見ることができます。覆いを被せることを、被覆栽培(ひふくさいばい)と言い、そうしてできたお茶の総称を「覆い茶(おおいちゃ)」と言います。「かぶせ茶(※11)」とは、被覆栽培の煎茶のことです。抹茶の原料である、碾茶(※13)や、高級茶として知られる玉露(※12)も、覆い茶に分類されます。玉露や碾茶は、通常のかぶせ茶よりも被覆期間が長く、2~3週間ほどで、高級な品は、黒い覆いでなく、茶畑に棚をつくり上に藁などをかぶせた伝統栽培でつくられます。それらは、機械でなく、良い芽だけを手摘みされるため、良質で高価になります。玉露の主な産地は、京都や福岡県八女市です。
一方、被覆しないで、日光を葉にしっかり当てて栽培するお茶を露地栽培(※7)と言います。
かぶせ茶や玉露などのお茶は、露地栽培(ろじさいばい)のお茶と比べて、うま味成分(テアニン)が多く、まろやかな味わいとなり、葉緑素(クロロフィル)が増すことで、お茶の色も深い緑色になります。また、覆い香と呼ばれる青のりに似た香りがします。露地茶は、様々な健康効果で知られるカテキンが多く、しっかりとした渋みとさわやかな香りが特徴です。
関連記事:最高級の日本茶 玉露とは?伝統本玉露とは?歴史や文化、魅力とともに解説
碾茶(てんちゃ)とは?
前述の通り、抹茶の原料となる茶葉です。玉露と同じように栽培されたお茶ですが、玉露は蒸して揉み、煎茶と同じ要領でつくられますが、碾茶は蒸した後に揉まず、乾燥させるため、青のりやあおさのような形をしています。抹茶は、碾茶を石臼で挽いたものです。愛知県西尾や京都宇治が主な産地です。福岡県八女市(星野村、黒木町他)でも玉露の生産のノウハウを生かして、碾茶の生産が盛んになっています。
近年では、鹿児島県でも碾茶をたくさん生産(全国1位)するようになっています。海外でも抹茶の需要が高まっているので、今後もこうした動きが加速しそうです。
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煎茶(※9)・玉緑茶(※10)の違いは?
ずばり、茶葉の形の違いです。まっすぐな形が煎茶、曲がった形が玉緑茶(たまりょくちゃ)。
煎茶(荒茶)は最終工程に「精揉(せいじゅう)」という茶葉を針状に整える工程があります。玉緑茶は、精揉がなく、丸く曲がった形になります。(玉緑茶には、蒸し製玉緑茶と釜炒り茶があります。)
日本では、煎茶が主流となっていて、玉緑茶は、主に佐賀県や熊本県、その他鹿児島県の枕崎市や静岡県の伊豆地方などで生産されています。
別名として、煎茶を「のび」、玉緑茶を「ぐり」と呼ぶこともあります。
普通煎茶(※14)・深蒸し茶(※15)・特蒸し茶(※16)とは?
違いは、蒸し具合です。
普通煎茶は、通常30秒から40秒ほど蒸気を当てて製造されます。深蒸し茶は、そのおよそ2~3倍ほど長く蒸します。特蒸し茶は、さらに長く蒸したお茶です。長く蒸すことで、茶葉の成分が溶けだしやすくなり、水色は濃い緑に、味はまろやかになります。香りや渋みは、蒸しの浅いお茶の方が強くなります。
関連記事:普通煎茶と深蒸し茶の違い
釜炒り茶(※7)
緑茶は、生葉を蒸してつくる「蒸し製」の緑茶の他に、ごくわずかに「釜炒り製」があることは、お話ししました。「釜炒り茶」とは、摘んできた生葉を大鍋で炒ってつくります。さっぱりとした味と釜香と言われる香ばしさが特徴です。水色は、黄色っぽく出てます。茶葉が白っぽいものもありますが、白カビではありません。逆に良質な釜炒り茶として知られています。
写真の釜炒り茶:嬉野製 被覆栽培した最高級品 品種はおくみどり 。
日本では、現在、九州の一部の地域(嬉野、熊本・宮崎の山間部)でのみつくられています。嬉野の釜炒り茶は、中国から伝わり大きい丸釜で炒ります。熊本・宮崎の釜炒り茶は、加藤清正の朝鮮出兵の機に伝わり、青柳茶とも呼ばれています。
中国の緑茶は、釜炒り茶です。中国茶=烏龍茶と考える日本の方も多いと思いますが、中国本土では、釜炒りの緑茶が最も多く生産されているお茶の種類になります。
・関連記事:釜炒り茶:香ばしさが魅力のお茶
加工茶したお茶※8
玄米茶(※18)
出来上がった煎茶などを再加工したお茶です。玄米茶(※18)は、煎茶(または玉緑茶)を半分と米を炒ったもの半分加えた混ぜ合わせたお茶です。炒った米が香ばしく、飲みやすいお茶になります。茶葉は、一般的に番茶を使用する場合が多いようです。また、玄米茶に抹茶を加えた「抹茶入り玄米茶」も人気です。
ほうじ茶(※19)
番茶などを高温(約300℃)の釜で炒ってつくられます。くき茶を焙じたくき(棒)焙じも同様です。茎の部分は、高温でポップコーンのように膨張して量(かさ)が増します。非常に香ばしく、近年、ほうじ茶のピラジンという成分にリラックス効果があることが知られてきました。一般的に苦くて渋い三番茶や秋冬番茶などを原料としますが、一番茶を使用したものは上質なものとされ、味わいも優れています。
写真:お茶の山麓園のほうじ茶
各種お茶の県別の生産量を知りたい方は、全国茶生産団体連合会(令和4年茶種別生産実績)をご参照ください。
その他の日本茶の種類。
※図 荒茶から仕上げ茶までの製茶工程
荒茶煎茶などを仕上げる工程で、出来上がったお茶を仕上げ茶(本茶)、その他を出物と呼びます。茶業者間では、出物のうち、葉の大きいものを「頭(あたま)」、くきの部分を「棒または木」、芽茶や粉茶を「浮」などと呼んでいます。
そもそも、荒茶とは?
農家が出荷するお茶を「荒茶(あらちゃ)」と言います。荒茶を買いつけた茶業者(主に茶問屋)は、茎や粉を取り除き、火入れと呼ばれる工程で再乾燥し、一般に流通する仕上げ茶になります。
くき茶
取り除かれた茎の部分を多く含まれるお茶を「くき茶」といいます。地域によっては、「白折(しらおれ)」、「かりがね」、「棒茶」などと呼びます。茎の青っぽい香りと、すっきりとした味わいが特徴です。
粉茶
粉茶とは、荒茶を篩(ふるい)にかけて小さい茶葉を集めたものです。お茶に出すと濃いお茶になります。お寿司屋さんの「あがり」というお茶は、粉茶のことです。最近では、粉末茶を使用する場合も多くなりました。急須で淹れると急須が詰まりやすくなるなどの欠点はあります。
芽茶
茶葉の芽や葉の先端部分を集めたお茶。味は本茶に劣らず、出物のため安価な分、お買い得な面がある。
粉茶と粉末茶、抹茶との違い
粉茶は、細かい茶葉。粉末茶は、煎茶などを挽いたもの。粉末茶は水に溶けますが、粉茶は溶けないため、茶漉しなどを使用する必要があります。粉末茶と抹茶の違いは、抹茶は碾茶(てんちゃ)を原料とし、粉末茶は煎茶などを原料としていること。お値段的には、粉茶が安く、加工が必要な粉末茶が高価で、原料が高い抹茶が最も高価になります。
日本茶の分類としては以上になりますが、お茶の特色としては、産地や品種によっても大きく違いがあります。有名なお茶の産地は、静岡茶、宇治茶、狭山茶、八女茶、嬉野茶、鹿児島茶などがあります。品種は、やぶきたが最も多く、次いでゆたかみどり。高級品種として「さえみどり」などがあります。また、品種は、早生や晩成、煎茶用、抹茶用、紅茶用など、お茶の収穫時期や用途によって様々なものがあります。
参考 その他の品種:べにふうき、あさつゆ、さやまかおり、おくゆたか、つゆひかり
一番茶・二番茶・三番茶・四番茶・秋冬番茶とは、どんなお茶?刈番とは?
一年の最初、時期にして4月下旬~5月中旬に摘まれるのが一番茶、2番目、5月末~6月にかけて摘まれるお茶が二番茶。秋冬番茶は、文字通り秋頃に摘まれるお茶です。一番茶は、時期には「新茶」と呼ばれ、二番茶以降のお茶を総称として「番茶」と称します。(京都では、ほうじ茶の事を「番茶」または「お番茶」と呼んだりします。また、硬くて大きい葉のことを「番茶」と呼ぶ場合もあります。)
品質的には一番茶が最も優れ、次いで二番茶、三番茶の順です。一番茶は、うま味の素であるアミノ酸を多く含み、二番茶、三番茶はカテキンが多いです。
他に「刈番(かりばん)」と呼ばれるお茶もあります。一番茶を摘んだ後、二番茶を摘む前に、遅れ芽を刈り揃えます。これらが、刈番です。茶葉が縒れておらず、チップ状になっている物が多く、玄米茶や安価なお茶などの原料となります。
・緑茶は、種類によって温度や淹れ方が違います。別ページで適温などを解説しています。
・お茶の入れ方、出し方などのマナーについては、別ページご覧ください。
半発酵茶(※3)とは? 烏龍茶が日本でおなじみ
烏龍茶などで知られる中国茶が、半発酵茶になります。中国では、白茶や青茶などと呼ばれます。
白茶は、茶を摘んでしばらく放置して酸化発酵を促す萎凋(いちょう)という工程の後に乾燥させてつくる、弱発酵茶。日本では、あまり馴染みがないかもしれません。上品な香りと、甘みの残る後味が特徴。産地は、福建省で白毫銀針、白牡丹などが有名。
一方、「青茶」は、発酵度合いにして20%~80%と幅が広く、包種茶など発酵の軽いものから、凍頂烏龍茶や鉄観音(発酵が中程度)、さらに発酵が進んだ東方美人などがあります。半発酵茶でも発酵が軽いものは、緑茶のように黄色みかかったグリーン色をしています。半発酵茶である青茶は、中国の福建省や台湾などで生産されています。
お茶を摘んで、時々錯乱してしばらく放置し(萎凋)、その後揉んで発酵を進めてから、乾燥します。
半発酵茶は、発酵による香りの変化が楽しめます。
※農研などが開発した「萎凋香緑茶」という緑茶ながら烏龍茶のような花の香りを楽しめるお茶も近年開発されています。
関連記事:烏龍茶でもない?! 新感覚 ハーブや花の香りの緑茶!「知覧 烏龍緑茶」すごいお茶が完成
発酵茶(※)とは? 最も世界で飲まれているお茶
発酵茶とは、いわゆる紅茶のことです。世界で最も多く飲まれているお茶です。元々は中国が発祥でイギリス人に好まれたことから、やがて植民地でも生産されるようになり、世界中に広がりました。
最も、発酵が進んだお茶で、最も香りが高く、お茶の色合いは赤褐色です。これは、カテキンが酸化によってテアフラビンやテアルビジンなどに変化することで起こります。
インドのダージリン、アッサムやスリランカ、ケニアなどが生産量の多い地域です。
紅茶は、ストレートで飲むだけでなく、砂糖を添加するほか、ミルクティー、ハーブティーなど多様な飲み方があります。
また紅茶は、形によって等級(品質でなくあくまで形状)が分かれています。好みに合った産地と等級を選ぶとよいでしょう。
後発酵茶(※) 微生物で発酵させたお茶
これまでお伝えしたのは、酸化発酵によるお茶の種類でしたが、後発酵茶は、カビ(菌)やバクテリアによる発酵によってできるお茶のことです。あまり馴染みがない方には、カビ(菌)や微生物と聞くと印象が悪く聞こえますが、お酒や味噌の「こうじ」や漬物のように考えてください。
中国では黒茶と呼ばれる、プーアル茶(普洱茶)が主な後発酵茶です。主に雲南省で生産されています。まず、中国の緑茶(釜炒り茶)と同じように、炒って酸化発酵を止め、その後、茶葉を積み上げて水をかけ、多湿状態にし、20日くらいカビ付け発酵させ、天日干し(乾燥)して出来上がります。普洱茶は熟茶と生茶がありますが、後発酵茶は「熟茶」の方です。脂肪分解酵素が多く、油を多く使用する中華料理に適したお茶です。
日本にも、ごくわずかでほとんど流通していませんが、後発酵茶があります。碁石茶(※27)や阿波番茶(※28)、バタバタ茶などです。碁石茶は、その名の通り碁石のような形をしており、最初にカビを付けて、その後漬物と同じように樽に入れて石を載せ、数週間後に天日干しして完成です。
阿波番茶は、最初から漬物のようにして作ります。
カビを付けるお茶は、カビっぽい香りがし、漬物のようにして作るお茶は、漬物のような酸味があります。いずれも特徴のあるお茶です。
お茶の種類のまとめ
お茶は、ツバキ科のお茶の木から摘まれたもので、発酵の有無や程度、加工によって様々で多くの種類があることがわかると思います。ここでは、日本茶について多く解説しましたが、その一つ一つが奥深く、産地や品質によっても違いが大きいことを心に留めておいてください。本当に様々なお茶があるので、好みや気分に合わせて、お茶を飲み合わせるのもよいでしょう。
日本茶は、日本食に合い、中国茶は、中華料理に、紅茶は洋菓子と相性が良いのも、それぞれの風土と食文化が、お茶のスタイルを作り上げてきたからでしょう。日本茶は、中国やヨーロッパだと、軟水と硬水の違いなどで本来の味を発揮できません。中国茶や紅茶は、硬水でも美味しく飲めるように、香りを重視したお茶になっています。
このようにお茶は千差万別で、飲まれる国や地域によって様々な種類があります。アジア・ヨーロッパなど歴史や風土を想像しながら、お茶を楽しむのも一興です。
また、お茶には様々な健康成分があります。お茶の種類、品種などによって成分が大きく異なり、健康効果も様々。嗜好品として楽しむだけでなく、機能性を考えて飲み分けるのも、これからのもう一つの飲み方かもしれません。
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