水出しで美味しいお茶を選ぶには?淹れ方は?お茶屋さんが解説!

Q. 水出しで美味しいお茶を教えて下さい。

このような質問がございました。

どんなお茶が水出しした際に美味しいのか? おすすめかをご説明いたします。

美味しい 水出し緑茶

水出しとお湯出しでは、お茶の味に大きな違いがある?! 水出しだと、どんな味?

1.旨味や甘みが際立つお茶になる

お茶の葉は、昆布のだしで知られる「グルタミン酸」他、甘みやうま味の基となるアミノ酸を豊富に含みます。アミノ酸の中でも最も多い成分は「テアニン」です。テアニンは、緑茶特有の旨味成分として知られ、リラックス効果があることも研究で分かっています。

これら、お茶のうま味となるアミノ酸類は、低温の水でも多く抽出が可能となっています。つまり、お湯で出さなくても、水出しで旨味、甘みあるお茶が作れるということです。

テアニンのリラックス効果について

2.渋みや苦みを抑えた味になる。

お茶のカテキンという成分は、多くの方がご存知だと思います。抗酸化ポリフェノールで抗菌や抗がん作用など、私たちの健康に役立ってくれています。

カテキンを直接舐めてみた方は、あまりいないと思いますが、カテキンはどんな味なのでしょう?実は、タンニンの一種で苦みや渋みの素になります。ワインの渋みもブドウの種や皮、熟成に使用するオーク樽の成分などタンニンが関係しています。

カテキン類は、温度が高いほど抽出され易いという性質があります。

つまり、水出しなどの低温でお茶を抽出すると、渋みや苦みの素であるカテキン類が少なく、旨味は十分なお茶(マイルドで甘み感じる)が出来上がります。

カテキンにも種類あり!水出しだとさっぱりとした苦みと後味に甘みを感じるようなカテキンの割合が多くなる!

さらに言うと、カテキンも数種類あり、低温で抽出することで、さっぱりとした苦みと後味が甘いカテキンの割合が多くなります。

緑茶の主なカテキン(他にもありますが)は、エピカテキン、エピガロカテキンとエピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどがあります。ガレート型のカテキンは、主に渋みがあり、ガレート型でない(遊離型)方は、さっぱりとした苦みと後味に若干の甘みを感じさせます。

ガレート型はより高温の方が抽出しやすく、遊離型は低温でも出やすい傾向にあります。2℃だと、カテキン類全体の55%が遊離型のエピガロカテキンになります。

以前テレビでも紹介がありましたが、エピガロカテキンの割合が多いお茶を飲むと免疫細胞(マクロファージ)を活性化させ、免疫力アップ効果が期待できます。特にゆたかみどりという品種のお茶は、エピガロカテキンを多く含む品種茶で、機能性を期待される方におすすめの品種です。

どんな茶葉が水出しに適しているか?選び方のコツ

前述の通り、お湯でなく水出しの場合は、温度が低いため、カテキンの渋み系の味がでにくく、旨味成分であるテアニンなどのアミノ酸は出やすいということでした。

つまり、旨味が多く、カテキンが少ない茶葉が水出しに適しているということです。

・関連記事:お湯の温度で成分、お茶味が変わる!

旨味が多く、カテキンが少ないのは、どんなお茶?

知覧の茶畑 一番茶

1.一番茶

一番茶とは、4月~5月にかけて摘まれるお茶のこと。時期には「新茶」として販売しているのも一番茶です。一番茶は、その後に摘まれる二番茶や三番茶と比べて、アミノ酸量が2~3倍ほど多いのが特徴です。また、カテキンは二番茶や三番茶と比べて少なくなっています。二番茶や三番茶を水出しした場合、旨味が少なく、茶葉に多く含まれる渋み成分も低温では出にくいため、味の薄いお茶になります。特に二番茶や三番茶は葉も硬いため、低温では出にくい。番茶を使う場合、せめて深蒸し茶にしましょう。

一番茶の見分け方

お茶のパッケージには、一番茶と表記のあるものは少ないようです。どのお茶が一番茶なのか実際のところ分かりにくいかもしれません。新茶と書いてあれば、それは一番茶です。お値段が高いお茶は比較的一番茶を使用している場合が多いですが、番茶をブレンドしてあることも多いようです。新茶を選ぶか、一番茶の表記のあるもの、お店の人(専門店)に訊ねて購入すると良いでしょう。

・関連記事:一番茶や二番茶の違いについて

2. かぶせ茶

令和3年知覧茶(新茶)茶畑 被覆 かぶせ茶

写真:新茶(一番茶)収穫前の茶畑は、黒い覆いが被せてある

本来なら玉露が最もアミノ酸が多いお茶です。しかしながら、玉露は高価で淹れ方も難しいため、日常用として使用される方は、少ないです。日常用で玉露に近いお茶はというと、かぶせ茶です。かぶせ茶は、玉露と同じように収穫前に覆いを被せて日光をある程度遮光して摘みます。こうすることで、テアニンなどの旨味成分が多くなり、カテキンは減少します。(実は、テアニンは日光を浴びるとカテキンに変化します)

かぶせ茶の見分け方:店頭に並んでいるお茶は、かぶせ茶と表記のない製品が多いのが実情です。購入されるときの判断材料として、鹿児島茶の一番茶であれば、多くはかぶせ茶になります。他の産地も価格帯の安い一番茶でなければ、かぶせ茶の場合が多いです。かぶせ茶は、綺麗なグリーン色なのに対し、露地栽培のお茶は、黄みがかったグリーン色をしています。

・関連記事:お茶の種類について

・参考記事:お茶の種類によるアミノ酸量とカテキン量

3.旨味が多く、カテキンが少ない品種は?

さえみどりとあさつゆの茶葉

実は、お茶には、たくさんの品種があります。その中でも旨味が最も多い品種は、「さえみどり」と言われています。さえみどりの上質なものは、上品な旨味があり、渋みが非常に少ない高級品です。現在、さえみどりの栽培面積も増え、さえみどりと交配した優良品種なども登場してきていますが、まだほんのわずかです。さえみどりの他には、やぶきた、あさのか、おくみどり、おくゆたかなども旨味の強い品種です。

さえみどりの見分け方:お茶屋さんの多くは、品種をブレンドして製造していることが多いです。元々さえみどりの栽培面積は2~3%と言われ、全体的に少ないのですが、鹿児島県では、13%程度増加しています。九州産で増えてきていますので、さえみどりの表記のあるものか、お店の人に訊ねて購入すると良いでしょう。

4.火入の強めのお茶を選ぶ

水出し用の茶葉の多くは、強火で焙煎してあります。焙煎が強ければ、当然香ばしい風味のお茶に仕上がります。茶葉を水出しの場合、お湯で出した時の様な茶葉本来の香りは目立たなくなりますが、焙煎香の香ばしさはは比較的はっきりと出てきます。もちろん焙煎が弱いお茶も、それはそれで、マイルドな風味で美味しいです。好みにはなりますが、焙煎が強い方が香りの特徴が出て一般的に好まれるお味になります。

焙煎が強すぎると、ほうじ茶の様な茶色のお茶になります。グリーン色のお茶が好きな方は、ほどほどのものが良いでしょう。

美味しい水出し茶の淹れ方

市販のティーパックを使用する場合

図参照

1.茶葉10~15g、お茶パック、水1リットル、容量1リットルで密閉できるボトル

2.お茶パックに茶葉を摘めます。

3.茶葉の入ったお茶パックを水を入れたボトルに投入します。

4.ボトルをしっかり振ります。目安10秒ほど。水が綺麗なグリーン色になるまでシェイクします。

5.冷蔵庫に3時間ほど保管します。この間にもお茶の旨味が水に溶け出します。

完成です。

茶葉を直接入れる場合

最近よく見かけるフィルターインボトルや、茶漉しのついたボトルがありますので、そちらに茶葉と水を投入してください。あとは、上述のティーパックの容量と同じです。

ちなみに画像のお茶は、フィルターインボトルにさえみどりの上等な品を投入してつくりました。

フィルターインボトルについて

水出し茶の保管について

水出しの場合は、お湯で出すよりもじっくり時間をかけ、冷蔵庫で保管してください。ペットボトルのお茶は、酸化防止剤などが添加してあるため日持ちがします。自分で作る水出し茶であれば、防腐剤などは入っておりません。そのため保管は必ず冷蔵庫がオススメです。できれば24時間以内に消費しましょう。

まとめ

このように、お茶は、お湯出しと水出しでは、味、香りの出方に違いがあります。水出しでは、旨味の多い一番茶やかぶせ茶を選ぶことがポイントです。品種については、好みもあるので、自分好みに合わせて選ぶのがよいでしょう。これらのポイントを踏まえれば、きっと美味しい水出し茶にたどり着けるはずです。

お茶の種類も豊富なので、好みやシーン、機能性なども考えて飲み分けるのもひとつの方法です。

関連記事:お茶の淹れ方や出し方、マナーについて

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