
「あさつゆ」は、渋みが少なく、濃厚な甘みとうま味、青みの強い美しい水色が特徴の煎茶用品種です。その味わいが玉露を思わせることから「天然玉露」とも呼ばれます。ただし、あさつゆは茶の品種名であり、「玉露」という茶種そのものではありません。
この記事では、あさつゆの来歴や味・香り、天然玉露と呼ばれる理由、本物の玉露との違い、さえみどり・やぶきたとの比較、おいしい淹れ方、購入時の選び方まで、日本茶を製造・販売する立場から分かりやすく解説します。
あさつゆの特徴を先にまとめると
- 1953年に茶農林2号として登録された歴史ある煎茶用品種
- 宇治在来種の実生から選抜された
- 甘み・うま味が強く、苦みや渋みが少ない
- 被覆栽培と深蒸し製法により、濃い青緑色の水色になりやすい
- 独特の品種香があり、あさつゆを飲み慣れた人には見分けやすい
- 全国の栽培面積は多くなく、大部分が鹿児島県に集中している
- 「天然玉露」は愛称であり、茶種としての玉露とは異なる
あさつゆとは?宇治在来種から生まれた「茶農林2号」
あさつゆ(朝露)は、日本茶の品種の一つです。宇治在来種の実生から選抜され、静岡県金谷の茶業試験場で育成されました。1953年に農林省の茶農林2号として登録された、非常に歴史の長い煎茶用品種です。
同じ1953年には、現在も日本で最も広く栽培されている「やぶきた」が茶農林6号として登録されています。あさつゆは、日本の品種茶の歴史を語るうえで欠かせない初期の優良品種といえます。
| 項目 | あさつゆの概要 |
|---|---|
| 用途 | 煎茶用品種 |
| 来歴 | 宇治在来種の実生から選抜 |
| 登録 | 1953年・茶農林2号 |
| 摘採時期 | 鹿児島県の資料では、やぶきたより約2日早い中生種 |
| 味 | 甘み・うま味が強く、渋みが少ない |
| 水色 | 被覆・深蒸しで青みの強い濃緑色になりやすい |
| 主な産地 | 鹿児島県、とくに南九州市など |
なぜ「天然玉露」と呼ばれるのか
あさつゆが「天然玉露」と呼ばれる最大の理由は、煎茶でありながら、玉露を思わせる濃厚なうま味と甘み、少ない渋みを持つからです。
一般的な煎茶は、爽やかな香りと適度な渋みを楽しむお茶です。これに対して、良質なあさつゆは、口に含んだときにとろりとした甘みとうま味が広がり、苦みや渋みが穏やかです。この味の印象が玉露に似ているため、「天然玉露」という愛称が定着しました。
あさつゆと玉露は同じものではありません
ここは誤解されやすい点です。あさつゆは品種名、玉露は栽培・製造方法によって分けられる茶種名です。
| 比較 | あさつゆ | 玉露 |
|---|---|---|
| 何を表す名称か | 茶樹の品種 | 茶の種類・製法 |
| 原料品種 | あさつゆ | さえみどり、ごこう、やぶきたなどさまざま |
| 被覆栽培 | 商品により異なる。短期間被覆するものも多い | 摘採前に20日程度、日光を遮って栽培 |
| 味わい | 甘みとうま味が強く、渋みが少ない | 非常に濃いうま味と覆い香が特徴 |
| 位置づけ | 一般には煎茶・深蒸し煎茶として販売 | 高級な覆い茶 |
したがって、「天然玉露」はあさつゆの魅力を分かりやすく表した呼び名であり、玉露と同じ栽培基準・製法であるという意味ではありません。
あさつゆの味・香り・水色の特徴
1.濃厚な甘みとうま味
あさつゆ最大の魅力は、濃厚で丸みのある甘みとうま味です。良質な一番茶は、口当たりがやわらかく、舌の上にまろやかな余韻が残ります。渋いお茶が苦手な方にも比較的飲みやすい品種です。
2.苦み・渋みが穏やか
やぶきたなどの一般的な煎茶と比べると、刺激的な苦みや渋みが少なく感じられます。ただし、熱湯で長時間抽出すれば、あさつゆでも苦みや渋みは出ます。甘みを楽しみたい場合は、やや低めの湯温がおすすめです。
3.青みの強い濃緑色
鹿児島県の品種資料では、あさつゆは被覆栽培と深蒸し製法を組み合わせることで、濃厚で青みの強い水色と滋味が得られるとされています。実際に良質な深蒸しのあさつゆを淹れると、抹茶を加えたのかと思うほど鮮やかな緑色になることがあります。
4.あさつゆ特有の香り
あさつゆには、やぶきたやさえみどりとは異なる独特の品種香があります。香りの感じ方は、産地、被覆の有無、蒸し度、火入れによって変わりますが、良質なものは甘さを感じさせる青い香りと、濃厚な滋味が一体になっています。
一方、この個性的な香りは好みが分かれる場合もあります。「すっきり爽やかな煎茶香」を第一に求める方よりも、濃厚さや品種らしい個性を楽しみたい方に向いています。
あさつゆは本当に希少?栽培の約9割が鹿児島県

農林水産省の令和5年の資料では、全国のあさつゆ栽培面積は約520ヘクタールで、品種別茶園面積の約2%です。一方、鹿児島県の同年の栽培面積は455ヘクタールでした。調査方法の違いには注意が必要ですが、単純比較では全国のあさつゆの約9割が鹿児島県に集中している計算になります。
鹿児島県の令和7年資料でも、あさつゆは441ヘクタール、県内茶園面積の5.4%を占めています。全国的には少ない品種ですが、鹿児島茶では今も重要な優良品種の一つです。
主産地として特に知られるのが、南九州市の知覧地域です。なかでも山間部の後岳は、あさつゆの産地として古くから知られてきました。ただし、現在は「後岳産」という地名だけで品質が決まるわけではありません。畑の管理、摘採時期、被覆、蒸し度、火入れ、保管状態などによって、同じ品種でも味は大きく変わります。
あさつゆ・さえみどり・やぶきたの違い
あさつゆと比較されることが多い品種が「さえみどり」です。さえみどりは、やぶきたを母、あさつゆを父として育成されました。そのため、あさつゆの鮮やかな水色、甘み、うま味、渋みの少なさを受け継いでいます。
| 品種 | 味わい | 香り | 水色 | おすすめの人 |
|---|---|---|---|---|
| あさつゆ | 濃厚な甘みとうま味。渋みが少ない | 個性的で品種特有の香り | 深蒸しで濃い青緑色 | 濃厚で甘いお茶が好き |
| さえみどり | 上品で繊細な甘みとうま味 | 華やかでやさしい芳香 | 明るく鮮やかな緑色 | 上品でバランスのよい高級茶が好き |
| やぶきた | うま味・渋み・コクのバランスがよい | 爽やかな煎茶らしい香り | 黄緑~緑色 | 昔ながらの日本茶らしい味が好き |
簡単にいえば、濃厚で個性的なのがあさつゆ、上品で美しいのがさえみどり、香味のバランスに優れるのがやぶきたです。ただし、品種だけで品質が決まるわけではなく、産地と製造方法によって印象は変わります。
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「あさつゆ100%」なら必ずおいしいわけではない
品種名は、お茶を選ぶ大切な手掛かりです。しかし、あさつゆ100%と表示されていれば、すべて同じ品質になるわけではありません。
- 一番茶か、二番茶以降か
- 摘採前に被覆したか
- 適期に摘まれたか
- 蒸し度と揉み方が適切か
- 火入れが強すぎないか
- 保管中に香りや色が劣化していないか
これらによって、味・香り・水色は大きく変わります。低価格品では、水色を補うブレンド原料としてあさつゆが使われることもあります。品種の魅力をしっかり味わいたい場合は、次の点を確認してください。
- 「あさつゆ100%」または品種割合が明記されている
- 一番茶・新茶である
- 産地が明確である
- 被覆栽培や深蒸しなど、製造上の特徴が説明されている
- 窒素充填・真空包装など、鮮度を保つ包装になっている
以前は「100gで1,000円以上」などが目安になりましたが、近年は茶葉相場や資材費が大きく変動しています。現在は価格だけで判断せず、茶期・産地・品種割合・製造方法を合わせて確認する方が確実です。
深蒸しのあさつゆは、茶葉が細かくても問題ありません

あさつゆは、濃い水色とうま味を引き出すために深蒸しで仕上げられることが多い品種です。深蒸し茶は、蒸し時間が長い分、茶葉がやわらかくなり、揉む工程で細かくなります。
そのため、袋を開けたときに粉や細かな茶葉が多く見えても、直ちに品質が悪いということではありません。細かな茶葉は成分が抽出されやすく、濃い緑色とまろやかな味が出やすい反面、急須の網が細かすぎると詰まりやすくなります。深蒸し茶用の帯網急須や、目の細かな網を備えた急須がおすすめです。
あさつゆのおいしい淹れ方

あさつゆの甘みとうま味を楽しむ基本の淹れ方です。商品ごとの蒸し度や茶葉の細かさによって調整してください。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 茶葉 | 1人分3~4g |
| 湯量 | 1人分80~100ml |
| 湯温 | 65~70℃ |
| 抽出時間 | 約60秒 |
湯冷ましがない場合は、沸騰したお湯を一度湯飲みに移し、さらに急須へ注ぐと温度が下がります。最後の一滴まで注ぎ切ると、二煎目もおいしく淹れられます。
甘みとうま味をさらに強く出したい場合
60~65℃の湯を使い、70~90秒ほどゆっくり抽出します。温度を下げると渋みが出にくくなり、あさつゆらしい甘みを感じやすくなります。
水出しでも楽しめます
茶葉10gに対して水500mlを目安にし、冷蔵庫で2~4時間抽出します。渋みの少ない、まろやかで鮮やかな冷茶になります。深蒸し茶は成分が出やすいため、途中で一度味を確認してください。
あさつゆがおすすめの人・向かない人
おすすめの人
- 渋いお茶が苦手
- 甘み・うま味の強いお茶が好き
- 濃い緑色の深蒸し茶が好き
- 品種ごとの個性を飲み比べたい
- 知覧茶や鹿児島茶が好き
好みが合わない可能性がある人
- 強い渋みや切れ味を求める
- 透明感のある黄金色の浅蒸し茶が好き
- 細かな茶葉や沈殿が気になる
- 個性的な品種香より、爽やかな香りを重視する
よくある質問
あさつゆは玉露ですか?
いいえ。あさつゆは茶の品種名です。玉露は、摘採前に約20日間被覆して育てた茶葉を、玉露の製法で仕上げた茶種です。「天然玉露」は、あさつゆの味わいを表す愛称です。
あさつゆにはカフェインがありますか?
あります。あさつゆもチャノキの葉から作る緑茶なので、カフェインを含みます。含有量は茶期、栽培方法、茶葉の量、湯温、抽出時間によって変わります。カフェインを控えたい場合は、茶葉を少なめにし、低温・短時間で淹れる方法があります。
茶葉が粉のように細かいのは品質が悪いからですか?
深蒸し茶の場合、茶葉が細かいのは製法上の特徴です。細かい茶葉は濃い水色と味を出しやすくします。ただし、保存状態が悪く香りが抜けている場合や、粉ばかりで味のバランスが悪い場合もあるため、細かさだけでなく香りと味で判断してください。
さえみどりと、どちらがおすすめですか?
濃厚な甘み、個性的な香り、深い緑色を求めるならあさつゆ。上品な甘み、華やかな香り、明るく美しい水色を求めるならさえみどりがおすすめです。飲み比べると品種の違いが分かりやすい組み合わせです。
まとめ|あさつゆは、濃厚な甘みと緑色を楽しむ品種茶
あさつゆは、1953年に茶農林2号として登録された歴史ある品種です。甘みとうま味が強く、渋みが少ないことから「天然玉露」と呼ばれ、被覆栽培と深蒸し製法によって、青みの強い濃緑色の水色を楽しめます。
一方、あさつゆは品種であり、本来の玉露とは異なります。また、品種名だけで品質が決まるわけではありません。一番茶か、被覆されているか、産地や製造方法が明記されているかを確認すると、あさつゆらしい魅力を味わいやすくなります。
濃厚で甘く、鮮やかな緑色のお茶を探している方には、一度試していただきたい日本茶です。
あさつゆを購入する
山麓園では、知覧茶のあさつゆを取り扱っています。在庫や年度によって産地・内容・価格が変わる場合がありますので、各商品ページで最新情報をご確認ください。

参考資料
- 鹿児島県「茶業振興対策資料」
- 農林水産省「茶業及びお茶の文化に係る現状と課題」
- 鹿児島県茶業会議所「かごしま茶の特徴」
- 農林水産省「緑茶の種類について教えてください」
- 国立国会図書館レファレンス協同データベース「あさつゆの来歴・特性」
執筆・監修:株式会社山麓園 代表 甲斐宣史。日本茶・健康茶の仕入れ、製造、販売経験をもとに、公開資料と実際の官能評価を分けて記載しています。

