ほうじ茶とは、煎茶や番茶、茎などの緑茶を強い火で焙煎して作る日本茶です。焙煎によって茶葉は緑色から褐色へ変わり、煎茶とは異なる香ばしい香りが生まれます。
「ほうじ茶は番茶から作るもの」と思われがちですが、原料は一つではありません。比較的安価な番茶や出物、茎を使うものもあれば、一番茶を使って甘みや旨みを残したほうじ茶もあります。原料と焙煎の仕方によって、同じ「ほうじ茶」でも味わいは大きく変わります。

ほうじ茶は何から作る?
京都府茶業会議所では、ほうじ茶を「煎茶や番茶などを強い火で焙って製造したもの」と整理しています。番茶のほか、仕上げ工程で選別された茎を焙じた「棒ほうじ茶」「茎ほうじ茶」もあります。
一般的なほうじ茶には、成熟して葉が大きくなった茶葉、後期に摘採した茶、仕上げ工程で出る比較的安価な原料などが使われることがあります。これは単に「質が低いから」ではありません。強く焙煎することで香ばしさを引き出し、渋みや青い香りが前に出にくい、食事に合わせやすいお茶に仕上げられるという利点があります。
| 原料 | ほうじ茶にしたときの特徴 |
|---|---|
| 番茶・成熟した葉 | 比較的軽い味わい。香ばしさを楽しみやすく、食中茶にも向く |
| 茎・棒 | 茎特有の甘い香りが出やすく、焙煎香も立ちやすい |
| 一番茶 | 原料由来の甘み・旨み・厚みが残りやすく、ラテやスイーツにも合わせやすい |
なぜ、ほうじ茶は香ばしい?焙煎で生まれる香り
ほうじ茶らしい香ばしさは、茶葉を強く加熱することで生まれます。茶の焙焼を調べた研究では、焙煎によってピラジン類、フラン類、ピロール類などの香気成分が生成することが報告されています。別の研究でも、糖とアミノ酸が加熱されることで起こるメイラード反応の生成物が、焙じ香の重要な部分を占めることが示されています。
つまり、ほうじ茶の香りは単に「茶葉を焦がした匂い」ではありません。焙煎の温度や時間、原料の成分によって複数の香気成分が生まれ、それらが合わさって、ナッツ、トースト、穀物、カラメルを思わせるような複雑な香ばしさになります。
「300℃で焙じる」とは?
ほうじ茶の説明では「約300℃で焙煎する」と書かれることがありますが、ここは少し注意が必要です。焙煎機の設定温度、ドラムや熱風の温度、実際の茶葉温度は同じではありません。
山麓園で使用している焙煎機では、機械側を300℃に設定し、実際の茶葉の排出温度を見ながら仕上がりを調整してきました。過去の試作では、茶葉を約180℃で排出すると焙じ香がかなり強くなり、約170℃では緑茶らしい味わいがやや残るという違いがありました。
そのため、ほうじ茶は単に「高温にすればおいしい」のではなく、原料と用途に合わせて、どこまで焙じるかを決めることが大切だと考えています。
ピラジンの香りにリラックス効果はある?
ほうじ茶の香りについては、「ピラジンにリラックス効果がある」と紹介されることがあります。ピラジン類がほうじ茶の重要な焙煎香成分であることは研究で確認されています。
一方で、「ピラジンという成分だけがリラックス効果を生む」とまでは言い切れません。2024年に発表されたヒト試験では、緑茶やほうじ茶など日本茶の香り刺激が、リフレッシュ感や疲労感、作業時の反応などに好ましい影響を与える可能性が示されました。
研究結果から見ると、「ほうじ茶の香ばしい香りを心地よく感じることには一定の科学的な裏付けがある可能性はあるが、特定成分だけの作用として断定するのは適切ではない」というのが、現時点では無理のない説明です。
棒ほうじ茶とは?茎を使うと何が違う?
茶葉を仕上げる際に選別された茎は、「棒」「白折」などと呼ばれます。この茎を焙煎したものが棒ほうじ茶・茎ほうじ茶です。
茎は単なる副産物というわけではありません。石川県の加賀棒茶は、上質な茎を焙煎して作る代表的なほうじ茶です。農林水産省は、加賀棒茶について、葉を使ったほうじ茶より焙煎香の成分であるピラジン類や、花のような香りに関係するゲラニオール、リナロールが多く含まれる特徴を紹介しています。

ほうじ茶と番茶は同じ?京番茶との違い
ほうじ茶と番茶は同じものではありません。番茶などの緑茶を焙煎して、ほうじ茶にすることがあります。
また、京都には「京番茶」という地域に根付いたお茶があります。京都府茶業会議所では、一般的なほうじ茶と京番茶を別の茶種として説明しています。京番茶は、成熟した葉などを蒸し、揉まずに乾燥させ、強火で焙煎する独自の製法を持つお茶です。
「京都ではほうじ茶をお番茶と呼ぶ」と説明されることもありますが、地域の日常語と茶業上の分類は必ずしも同じではありません。少なくとも商品や製法を説明するときは、ほうじ茶・番茶・京番茶を分けて考えた方が正確です。
ほうじ茶は「安いお茶」なの?
ほうじ茶には比較的安価な原料が使われてきたため、「下級茶を焙じたもの」というイメージを持たれることがあります。確かに、京都府茶業会議所の説明でも、ほうじ茶原料として出物を中心とする比較的価格の安い番茶が使われることが紹介されています。
しかし、それは必ずしも欠点ではありません。
旨みの主張が強すぎず、香ばしくすっきりしたほうじ茶は、だし、魚、野菜など繊細な味を楽しむ日本料理の邪魔をしにくく、食中・食後のお茶として非常に使いやすいからです。飲食店でほうじ茶が広く利用されている理由の一つは、こうした「料理を邪魔しにくい香味」と使いやすい価格にあると山麓園では考えています。
一番茶でほうじ茶を作ると、何が違う?
一方、原料に一番茶を使うと、ほうじ茶の方向性はかなり変わります。
山麓園では以前から、熊本産一番茶を使ってほうじ茶を自家焙煎してきました。実際に製造すると、焙じ香だけではなく、緑茶由来の甘みや旨み、口に残る厚みを感じやすくなります。
これは「どちらが上か」というより、用途の違いです。
山麓園の考え方
繊細な日本料理と一緒に飲むなら、旨みを強くしすぎず、香ばしくすっきりしたほうじ茶が合わせやすい。
一方、牛乳や砂糖と合わせるほうじ茶ラテ、アイス、ケーキなどでは、乳味や甘みに負けないよう、一番茶など味のしっかりした原料を使うメリットがあります。
ほうじ茶はラテやスイーツにも向く
ほうじ茶の香ばしさは、牛乳、生クリーム、チョコレート、あんこなどともよく合います。粉末にすれば、ほうじ茶ラテだけでなく、シフォンケーキ、クッキー、アイス、ソフトクリームなどにも使えます。
山麓園では2019年に、熊本産一番茶を自家焙煎し、粉末にしてほうじ茶ソフトを試作しました。当時はソフトクリームミックス1Lに対してほうじ茶パウダー22gを使用。乳脂肪のあるクリームの中でも、ほうじ茶の香ばしさと茶の味を感じられる仕上がりになりました。


熊本産一番茶から「ほうじ茶ソフト」を作った実際の製造記録はこちら
食べ方・飲み方で選ぶ、山麓園のほうじ茶
山麓園では、用途に合わせてリーフ、ティーバッグ、粉末のほうじ茶を販売しています。
熊本産一番茶ほうじ茶
急須で香りと味を楽しみたい方に。熊本産一番茶100%を自家焙煎しています。
熊本産ほうじ茶ティーバッグ
毎日の食中・食後に手軽に飲みたい方に。熊本産一番茶100%。
鹿児島産ほうじ茶パウダー
一番茶の碾茶由来原料を使用。ラテ、製菓、アイスなど、味のしっかりしたほうじ茶を使いたい用途に。
よくある質問
ほうじ茶は緑茶ですか?
はい。煎茶や番茶、茎などの緑茶を焙煎して作るため、ほうじ茶も緑茶の一種です。焙煎することで色と香りが大きく変わります。
ほうじ茶と棒ほうじ茶の違いは?
一般的なほうじ茶は葉を主体にするものがありますが、棒ほうじ茶は茶の茎を主体に焙煎したものです。茎ならではの甘い香りが出やすいのが特徴です。
ほうじ茶は番茶からしか作れませんか?
いいえ。番茶はよく使われますが、煎茶、茎、一番茶などさまざまな緑茶原料から作れます。原料によって味や価格、向いている用途が変わります。
一番茶ほうじ茶は何に向いていますか?
そのまま飲むのはもちろん、原料の味がしっかりしているため、ラテやスイーツなど牛乳・砂糖と合わせる用途にも向いています。
まとめ|ほうじ茶は「焙煎」と「原料」で味が変わる
ほうじ茶は、緑茶を強く焙煎することで香ばしい風味を生み出した日本茶です。番茶、茎、一番茶などさまざまな原料を使うことができ、焙煎の強さによっても味わいは変わります。
比較的軽いほうじ茶は食事に合わせやすく、一番茶など味の強い原料を使ったほうじ茶は、ラテや製菓にも力を発揮します。
「ほうじ茶=安い番茶を焦がしたもの」ではなく、何を原料に、どのように焙煎し、何に使うかで設計できるお茶。実際に焙煎を続けてきた山麓園では、そのように考えています。
