2025年 煎茶価格が急騰!最大3倍以上——スーパーから「500円以下のお茶」が消える日

お知らせ



1.今年の鹿児島県市場:数字が示す“変調”

令和米騒動以上の急騰!茶業界に激震が起こっている。

  • 一番茶:価格 前年比146% 収量 前年比86%
  • 二番茶:価格 前年比224% 数量 前年比88%
  • 三番茶:価格 前年比299% 数量 前年比118%
  • 四番茶:価格 前年比329% 数量 前年比84%

令和7年ド取扱実績8/31時点 JA県経済連茶事業部 第19報 R7.9.8より

後半に行くほど上げ幅が拡大しました。単年の“高い年”というより、需給の組み替えが起きている指標と受け止めるのが妥当です。
秋冬番茶についても、ヤフートップニュースで以下のように紹介
静岡茶市場で異常事態「いくらなんでも高すぎる」 県産秋冬番の初荷 落札額が前年から4倍の1380円に
いつになったら、天井を打つのか?未だわからない状況。

鹿児島県の茶相場は、ちゃぴおんどっとネットで確認できます。


2.価格を押し上げた主因 —— “点”ではなく“面”の変化

① 春先の低温

萌芽・伸長の遅れで初期出荷が細り、序盤からタイトに。4月、5月寒い日が続き、芽の伸長がゆっくりとなったため、小さい芽で摘むことが多く、品質は高かったが、収量が減少したのも一因。新茶の摘採が例年より遅いことで、各小売店の新茶売り出しまでのタイミングがタイトとなり、高値圏になったというのも、高騰の理由の一つにもなった。

② 世界的な抹茶需要の伸長

輸出・訪日消費が継続的に拡大。製造現場では煎茶→碾茶・簡易碾茶への切替が増え、リーフ用の出来高が相対的に縮小。世界の需要に日本の抹茶生産は全く追いついておらず、急激な円高等起こらなければ、更なる高値圏も予想される。抹茶の原料である碾茶や簡易碾茶の生産が増えれば、増えるほど、煎茶が減少するため、お米と同じく量の不足による高騰が続いている。

③ 有機転換の加速(鹿児島)

今後3~4割が有機へ。転換期は収量・品質の振れが生じやすく、市場への上場が安定しにくい局面が続きます。有機転換で(*1)生産量が減少し、市場で流通しているのは主に慣行(有機でない)の煎茶のため、慣行の割合が減ることで煎茶が不足する要因になっている。

(*1)有機(JAS有機)への転換直後は慣行比で収量が2~4割落ちやすく、安定運用できると“慣行の70~90%”に戻す(あるいは並ぶ)ケースが多い

④ 飲料向けの優先配分

メジャーリーグでおなじみの大スターがペットボトルのラベルになるなど、話題性の高いペットボトル需要が二番茶以降の行き先を決める牽引役に。市場でスーパー売り用煎茶(深蒸し茶)の上場がなくなったことで、煎茶の不足が危機的に。
その結果、家庭用リーフの二番茶以降が市場に出にくい構図に。副産物の白折・粉茶・ほうじ茶も連鎖的に薄くなります。

いずれも単独では“説明し切れない”要因ですが、重なった結果としての相場という見立てが現実的です。


3.この先の見通し(2025年~)

  • 短期の増産は困難:お茶は多年生作物。新たな設備・園地の効果が本格化するまでタイムラグがあります。
  • 新茶の供給計画は読みづらい:抹茶・飲料向けの伸長が続く限り、リーフ用の確保は引き続き課題
  • 流通は再編が進む:リーフ中心だった問屋・小売は品ぞろえの再設計が必須。飲料・抹茶原料・副産物・健康茶など、複線化の巧拙が差になります。抹茶やドリンク用茶葉の扱いがない茶問屋は経営危機に陥る可能性があります。既に倒産している茶業者も出始めています。急激な変化に対応できる柔軟性が問われています。

“悲観”ではなく、構造に合わせて役割を変える局面と捉えるのが建設的です。


4.「500円以下の煎茶」が見つけにくくなる理由

原料(荒茶)だけでなく、選別・火入れ・包材・物流のコストも同時上昇
小容量化で表面価格を抑える工夫は可能でも、100g換算では従来水準の維持が難しいのが実情です。
・最低賃金の大幅な引き上げで、資材、加工賃、人件費などのコストがアップ。
・2025年の碾茶や簡易碾茶が高騰しているのを見て、農家さんが煎茶をつくらず、一番茶は、2500円~2000円後半が最低価格となり、仕上げて100g売りにすると1000円程度の販売価格になります。二番茶は、2025年は煎茶用の茶葉がほとんど流通しなかったのを考えると、500円の煎茶が出回るのは考えにくいことになります。


5.生活者の選び方:満足度を落とさないコツ

  • 定番は早めに確保:銘柄の在庫切替時に価格ギャップが出やすい。
  • 容量を見直す:100gに固執せず50g/70gで鮮度と質を優先。
  • 抽出で味を引き出す:60–70℃/短時間→うま味重視。二煎目の活用、水出しの併用で“1袋あたりの満足度”を高める。
  • カテゴリーを広げるほうじ茶・茎茶・玄米茶、さらに黒豆茶・小豆茶・桑の葉・モリンガなどの健康茶も日常の一杯に。

    関連記事:なぜお湯の温度でお茶の味が変わるのか?美味しい温度は?

6.小売・飲食の実務対応:今日からできる三点

  1. 在庫設計の前倒し
    定番SKUは季節の山の手前で確保。仕入れ単価・容量・販売単価の三点バランス表を用意。
  2. グラデーション設計
    50g/70g/100gで階段価格を構成。ギフトは少量多種で体験価値を高める。
  3. 提案の可視化
    POP・ECで温度×時間×茶量を明記。抽出写真・短尺動画の併用で離脱を抑制。

7.用語ミニ解説(検索ニーズも意識)


8.まとめ:非常事態ではなく“転換期”

  • 相場の上昇は事実。しかし、それは産地・流通が価値配分を見直すプロセスでもあります。
  • 生活者は淹れ方と容量で満足を維持でき、小売は提案力とポートフォリオで競争力を保てます。
  • 産地にとっては、持続可能性に近づくチャンス。適正対価が根づけば、長期的な品質の底上げにもつながります。

最後に、茶販売業者としては、茶の価格高騰が消費者の方のお茶離れにならないことを祈っております。お茶の新しい価値、スタイルの発見が必要と考えます。

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