お茶の出し方と淹れ方
お茶はおもてなしの気持ちとマナー
どんな時にお茶を出す?お茶はおもてなしの基本
友人宅や会社、お店などを訪れると、最初にたいていお茶が出ます。
お茶は日本人にとって“おもてなしの気持ちの象徴”となっているからです。
喫茶店や飲食店で、コーヒーを注文すると料金がかかりますが、お茶は無料のところが多いのはこうした理由からではないでしょうか?
日本でも外国人観光客が急増している今、「Japanese Hospitality=おもてなし」の文化に注目が集まっています。
お茶には、カフェインの効果で眠気を覚まし、心を落ち着けるリラックス効果(テアニン)があるため、来客や会議などで話を始める前にまずお茶を出すという文化は理にかなっています。
お茶を出すということは、おもてなしや日本の文化的習慣なので、当然マナーや作法というものがあります。
相手に心地よい時間を過ごしてもらうために、マナーや作法があるということを知っておくべきでしょう。
おもてなしの精神とされる「一期一会」という言葉は、茶道の祖「千利休」の言葉に由来します。
おもてなしの基本として、お茶の心とお茶の出し方を是非マスターしてください。
お茶を出すときに用意するもの
茶道の祖「千利休」の「利休7則」というものがあります。
その一つに「炭は湯の沸くように…」という言葉があります。
炭は段取り良く組まないと、思ったように茶の湯が沸きません。
つまり「しっかり段取り、準備をしなさい」ということなので、美味しいお茶を出すために、必要な道具とその使い方を学びましょう。
何が必要か、どのように使ったら良いかなど、下の表で確認してください。
お盆 | 人数分載せて少し余裕のある大きさのもの。角盆は配膳用とされるため、お茶には丸盆が望ましい。 その際、お盆の「正面」を事前に確認しておく。丸盆の場合は繋ぎ目が手前、反対側が正面です。 |
急須 | 茶葉によって適した茶こしが違うので、事前にチェック。深蒸し茶なら細かい網目のものを使う。 磁器の急須よりも陶器の急須が一般的に良い。急須としては、常滑焼や万古焼が実用的で優れている。 |
湯呑・茶托(ちゃたく) | 大きいと品がなく見えるので60ml~150mlサイズが一般的。高級茶ほど、少ない容量の湯呑が適している。茶托は湯呑に遭ったデザインとサイズが望ましい。そもそも茶托は、お茶が湯呑から垂れ、衣類や書類などが汚れないようにという意味がある。 |
お茶の葉 | 深蒸し茶はまろやかで水色がきれい、だが時間が経つと沈殿物が目立つ。相手の好みがわかっていれば、産地やお茶のタイプを合わせるのも気遣い。お茶のタイプについては、お茶の選び方を参照。お茶の種類については、別記事をご覧ください。 高級な茶葉を使う場合、粗茶ではないので「粗茶でございます」と言ってお出しするのは、不適切。声をかけるならば「冷めないうちにどうぞ」「失礼致します」などと伝える。 |
お菓子 | スナック菓子などではなく、甘みのあるお菓子を選ぶ。まんじゅうや半生菓子を出す場合、黒文字(くろもじ)を用意すると良い。黒文字とは主に木でつくられた楊枝で、竹やステンレス製の楊枝もある。一客に対し一本、お菓子の前に横になるよう置く。 夏には葛饅頭、秋はもみじ饅頭など、出来るだけ季節感のあるお菓子が好ましい。 なお、手が汚れるお菓子の場合、おしぼりなどを用意するとさらに良い。 |
・利休7則について詳しい情報 裏千家公式HP
お菓子について
利休7則のひとつに「夏は涼しく冬暖かに」という言葉があり、季節感を演出することを説いています。夏は涼を感じるお菓子を出し、冬は気分が温かくなるようなものを出す、まさに快適に過ごしてもらう気遣いと工夫です。涼しさを感じさせる風鈴なども、風流な演出ですね。
お茶の正しい入れ方(淹れ方)
美味しいお茶を入れるには、お湯の温度と抽出時間が重要です。事前に淹れて、お盆に載せてお出しします。
1.お茶の葉を急須に入れる。
もちろん、人数分の茶葉を用意します。目安として一人当たり2~3gですが、最初の一人分は4g程度。茶さじ1杯とかいろいろと言われていますが、実は茶葉(種類や品質)によって重さが全然違うので、あまり当てになりません。いつも使う茶葉が決まっている場合は、茶さじで分量(グラム)を量るのもOK。
2.お湯を冷ます。
ポットに入った熱湯を、人数分の湯呑に注ぎます。器を温め、注いだ時に温度が下がらないようにし、必要なお湯の量を量るためです。室温によって差はありますが、この時に10℃ほど湯温が下がり約90℃になります。
一般的な煎茶の場合、適温は70~80℃になるまで待ちます。急ぐ場合は、湯呑のお湯を湯さましや別の容器に入れるとまた10℃ほど湯温が下がります。お茶の適温については、別ページで詳しく解説しています。
急須にお湯を入れたら、約1分ほど待ちます。(時間は茶葉のタイプや好みによって異なります。茶葉の細かい深蒸し茶などは、30秒~60秒が最適と言われています。)
3.お茶の注ぎ方
急須の蓋の穴が、注ぎ口の方を向いていることを確認します。蓋の穴が前を向くことで、注ぐときに茶葉が急須の中でぐるぐる回転し、お茶の出が良くなります。←意外と知られていません。
湯呑の注ぐ際は、数回に分けてお茶の濃さと量が均一になるように注ぎます。
注ぎ終わった後に茶托に載せます。湯呑の底や外側が濡れた場合は、拭いてから茶托に載せます。
お茶とお菓子をお客様に出す。
お茶は相手の正面から出すのはなく、右後方からお出しするのが良しとされています。ただし、正面からでないとお出しできない場合は、「前から失礼いたします」と一声かけると良いでしょう。
お客様が椅子に座っている場合、立ってお出しするのではなく、お客様の高さに合わせて屈んで出すのがベスト。お盆はテーブルに仮置きして、茶托を両手で持ってお出しします。
お客様が畳の上に座っている場合は、畳の上にお盆を置き、正座してから同じように両手で茶托を持ちます。
お菓子を出す場合、お茶を出す前に、相手にとって左側になるように置きます。
次にお茶を出すときは、その右側に置きます。
お茶を置く際に柄のある湯呑だったら、柄の方をお客様の正面に向くようにおきます。茶道、煎茶道では柄のある方を「正面」と呼びます。茶碗や湯呑の「正面」を向けるという概念は、重要なマナーとなっています。
←左図:柄のある面、柄や模様がきれいに見える方が「正面」です。
形が均一で無柄無地で「正面」が見当たらない場合は、気にせず置いて大丈夫です。
置いた際に、ありがとうと言われた場合は、軽く会釈します。
誰から先に?お茶を出す順番
偉い人順にかな?というのは、間違いではありません。ただ、誰が偉い人なのか初めて会う場合はわからないですね。ですのでお客様側の上座から下座の順にお茶を出します。上座とは入り口から離れた奥の席、下座は入り口に近い席のことです。お客様に出し終わった後、身内や自社の社員へお茶を出します。
まとめ
お茶の出し方の作法やマナーは、お客様が自然に心地よく過ごしていただくために考えられたものです。一期一会の気持ちで精一杯もてなしをするというのが重要で、作法も気持ちがこもっていないと本末転倒です。
例えば、庭に咲いた花を一輪花瓶にさしておく、炎天下いらっしゃる方が涼しいように応接室や会議室の冷房を入れておく、お茶が冷めないよう湯呑をあたためておく、などの配慮を嫌がる人はいませんよね。
昨今、日本人の気遣いや相手への思いやりが、世界でも認められるようになっています。この機会にお茶の出し方を学んで日本人としてのおもてなしの精神を磨きましょう。