なぜペットボトルのお茶と急須で淹れるお茶の味は違うのですか?
↑という質問がありました。
●答え、全く違います。
成分や抽出方法、そもそも使用される茶葉に違いがあるため、味わいが異なるのです。急須で淹れるお茶が美味しいと感じる人が多いのは、どうしてなのかなどを解説いたします。
違いその1.成分を比較すると全然違うことがわかる!
急須で淹れたお茶の方が旨味が5倍以上(1煎目の場合)と圧倒的。
※静岡県環境衛生科学研究所報告 (44), 57-61, 2001
渋み成分を比較してみると、
京都府消費生活科学センター
渋みなどのタンニン成分は、急須で淹れるお茶は、ペットボトルのお茶と比べて、ポリフェノール量で1.4倍多く、カテキンは2.5倍多いのがわかります。
ポリフェノール量とカテキン量に差が出てしまうのは、ペットボトルのお茶は、抽出してからかなり時間経過しているため。カテキンなどは、酸化などで別の成分に変化していると考えられます。(カテキンでなくなっても別のポリフェノールとして残っている)また、カテキンが多く含まれる沈殿物は、フィルターで除去されているところも理由の一つでしょう。
カテキンは、苦みや渋みが割と強いので、カテキンの量が減ったペットボトルのお茶は、苦みが少ない傾向にあるのも納得がいきます。
つまり、急須で淹れたお茶の方が旨味も渋みも強く、緑茶らしい味を楽しめるという結論です。カテキン、アミノ酸両方とも多いので、健康効果に関しては急須で淹れた方が高いと思われます。
違いその2.使っている茶葉の品質が全く違う!
急須で淹れる茶葉は良質なものが多く、ペットボトル用のお茶は、安い茶葉を使っているから、味が違うのは当たり前。
ペットボトルドリンク用の茶葉は、メーカー取引先の話によると荒茶1キロ当たりおよそ300円~900円くらいで取引しているものを使っているようです。このくらいの価格だと、二番茶の中でも低品質なものか三番茶、安いものは秋冬番茶くらいの取引価格になります。さらに安いくき茶を主に使う場合も多いようです。(中には、中国産の茶葉に国産の茶葉をブレンドして国産表示しているものもあるそうです)
急須で淹れる茶葉は、家庭によって使用される価格帯は様々ですが、最も数量が出ている茶葉は、販売小売価格が100gあたり 500円程度の品。荒茶取引価格では、1キロ2000円近い程度ではないかと思います。
つまり、使用されている茶葉の品質については、圧倒的に急須で淹れるお茶の方が高いことになります。
急須で淹れるお茶は、試験では、うま味が5倍以上という結果ですが、その調査は実は、100gで1000円のお茶を実験で使っているため、違いが大きくなっている側面もあります。
では、仮に実験と同じ100g1000円程度の茶葉を急須で淹れたとして、ペットボトルのお茶とコスト的にどうかと比較しました。
湯呑一杯分あたりのコストは、ペットボトルのお茶(500ml入150円で買った場合)一杯あたり約30円、急須で淹れるお茶(100g1000円の煎茶)は、一杯あたり10円と、ペットボトルのお茶に比べて高価な茶葉を使っているにも関わらず、コストは半分以下と低くなります。多少面倒でも、急須を使ってお茶を淹れると、美味しく、さらに経済的なのがわかります。
ペットボトルは、様々なコストがかかるため、例え中身がほぼ、0円の水であっても、販売店に並べるまで(設備、人件費、容器代から物流コストまで)に46円程度のコストがかかるそうです。さらに、茶葉の使用量についても、急須で使用される茶葉に比べて3分の1程度の量しか使用されないため、よりコストがかからないような生産体制となっています。
・一番茶と二番茶、三番茶の違い。価格3倍、甘みやうま味のテアニンも3倍。
余談ですが、ペットボトルのお茶の原材料にアミノ酸等などの表記がある場合は、おそらくグルタミン酸ナトリウムという「味の素」が添加され、うま味を強化しています。添加物を気にされる方は、避けた方が良いでしょう。
違いその3.抽出方法が違う
これまで、急須の良いところばかりをお話ししましたが、抽出方法としては、急須で淹れるよりもペットボトルのお茶の方が、優れている面もあるかもしれません。ペットボトル用に使用されるような低価格帯の二番茶、三番茶などを急須で淹れてみると、番茶臭や苦み渋みが強く、やはりかなりの安っぽい風味のお茶になってしまいます。例えば、サービスエリアや社員食堂の無料給茶機のお茶がマズ過ぎる(個人的に飲めないレベル)のは、安い茶葉(おそらく三番茶くらいの粉茶)を使用し、急須と似た抽出方法だからでしょう。
しかし、茶葉の成分を分析し、温度と抽出時間を科学的根拠に基づいて抽出すると、番茶であっても、かなり味わいも変わると聞きます。さすがに急須では、難しいですが…。
対してペットボトルのお茶は、品質の低い茶葉を使用していて、かつ茶葉の使用量も3分の1以下であっても、美味しく飲めます。おそらく、低温でうま味成分を抽出する、抹茶を入れてごまかす、その他独自の高い技術で美味しさを引き出して(または調整して)いるものと考えられます。お茶屋さんはお茶の淹れ方が上手いと言いますが、お茶屋である私にも、三番茶や秋冬番茶を急須で淹れて、番茶特有の香りのない、ペットボトルのように飲みやすいお茶にすることはできません。
ペットボトルのお茶は、抽出後長い期間品質を保つ必要があります。そのため、酸化防止剤として、ビタミンCを添加してあります。
成分を比較してみると、ペットボトルのお茶の方がビタミンCを添加*している分、2.7倍も多くなっています。元々緑茶には、ビタミンCが多く含まれますので、この違いは、やはり味にも多少は関わってきます。しかし、ビタミンCは、レモンのようにすっぱい味ではありません。(意外かもしれませんが、ビタミンCは高濃度でないと酸味を感じません。)
*味とは、また別の話ですが、添加されるビタミンCは、天然由来のものではなく、合成されるものになります。高価に特別に大きな違いはありませんが、天然のビタミンCの方が働きに優れています。また、合成ビタミンCは、トウモロコシ由来が多く、遺伝子組換えのものを使用しているかの表示はなく、不透明感はあります。
4.違い4.茶葉の選定方法! ペットボトルメーカーの茶葉の仕入れ方とお茶屋さんの目利きの違い
急須で淹れるお茶は、茶師の舌で味を確かめ、番頭の判断で仕入れられます。
対して、ペットボトルのお茶は、成分検査でお茶を判断し、数値を見て仕入れを行うことが多いそうです。人間VS.機械の構図ですが、評価にあまり大きな差はないそうです。特にペットボトルのお茶は、味の均一性が強く求められますので、成分を一定にして味を均一にするという方法は、分かりやすく効率的で、確実な方法だと思います。特に大量仕入れになりますので、一つ一つ味を確かめるより、手っ取り早く、効率的です。
対してお茶屋さんは、自店や取引先の好みや特徴、お茶のイメージがバラバラにならないように、自らの勘を重視したスタイルです。そして、ペットボトルのような大量仕入れでないため、より特徴が出た味になります。
将棋や囲碁でも、人間対AIみたいな勝負がありますが、嗜好品の評価も成分、数値で決まる側面もあると思います。しかし、実際にお茶を飲むのは人間です。そして、人間にはそれぞれ個性もあり、同じものでも人間の勘や経緯、気持ちや愛情なども、飲んでみたときの印象も変わるものです。簡単には人間Vs.AIの決着はつかないと思います。
まとめ:急須で淹れるお茶とペットボトルのお茶の違い
1.急須で淹れるお茶は、品質の高いお茶を使用し、対してペットボトルに使用されるお茶は、格段に安い茶葉が使用される。それでも湯呑一杯分のコストとしては、急須で淹れた方が安くなる。
2.抽出方法が、違う。急須に対して、抽出温度やメーカーの独自の技術が使用されているため、味に違いがでてくる。ビタミンCの添加も多少は影響している。
3.仕入れ方が違う。急須で淹れるお茶の茶葉は、お茶屋さんが自分の舌で味を確かめ仕入れているのに対し、ドリンクのメーカーは、お茶の葉の成分を見て仕入れている。
ペットボトルのお茶も美味しく飲めるように、様々な工夫がありますが、良質な茶葉を急須で淹れると全く異なった味わいを楽しめます。
ペットボトルのお茶や、会社で出るあまり美味しくないお茶を飲んでいる方には、急須で淹れる美味しいお茶を飲んでみられると、お茶の価値観も変わり、急須で淹れる面倒くさい印象もなくなるかもしれません。
参考:我々、一般茶業者の取引単位は、人に抱えられる重さの30㎏が1本ですが、大手は、300㎏や600㎏の大きな袋に茶葉を入れて輸送するそうです。ちょっとスケールが違います。
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