
抹茶の品質は、粉砕する前からほぼ始まっています。品種、茶園、被覆、摘採時期、芽の成熟度、加工、火入れによって、色も香りも味も変わります。
山麓園では、完成した原料を市場から選ぶだけでなく、農家選びと品種選定の段階から、生産者と一緒に抹茶原料を設計しています。
完成した抹茶を探すだけでなく、どのような抹茶を作るのかを、収穫前から農家と考える。それが山麓園の抹茶づくりです。
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一般的な仕入れ方法と、山麓園の方法
日本茶の一般的な流通方法の一つは、農家や生産組織が荒茶を生産し、茶商が茶市場の入札や相対取引などを通じて購入する形です。
茶商は色、香り、味、形状を吟味し、多数の原料から目的に合う茶を選びます。仕入れた茶を選別し、火入れや合組によって完成度を高めることも、茶商の重要な技術です。
この仕組みには、複数の農家や産地からその年に良かった茶を選べる強みがあります。一般的な市場仕入れが劣っているという話ではありません。
山麓園の違いは、出来上がった茶を選ぶ工程に加えて、収穫前から生産へ関与することです。
| 項目 | 市場・相対取引から選ぶ方法 | 山麓園の直接生産依頼 |
|---|---|---|
| 始まり | 荒茶完成後に品質を見て選ぶ | 収穫前に農家・品種・目標を決める |
| 品種 | その年に出た原料から選ぶ | 用途と品質目標に合わせて選定する |
| 栽培 | 農家が設計した茶を評価する | 目標を示し、農家の経験と茶園の状態を踏まえて協議する |
| 買い取り | 品質と相場を見て購入する | 依頼分を全量買い取り。ただし品質ランクで価格が変わる |
| 評価 | 外観・香り・味など | 官能評価に加え、成分検査と色合いを確認する |
| 供給 | 代替原料を探しやすい | 指定農家・茶園に依存し、数量が限られる |
山麓園の抹茶原料ができるまで

- 作り手を選ぶ茶園、品種、栽培技術、加工設備、情報共有への姿勢、継続性を確認します。
- 用途を決める薄茶、ストレート、ラテ、製菓など、原料が価値を発揮する場所を考えます。
- 品種を選ぶさえみどり、さえあかり、せいめい、つゆひかり、きらりなどの特徴を踏まえます。
- 品質目標を設定被覆、摘採時期、芽の状態、成分、色など、目指す原料像を共有します。
- 買い取り条件を設定全量買い取りを保証し、品質ランク別の価格をあらかじめ設定します。
- 収穫後に評価成分、色、香り、味を確認し、買い取りランクと翌年の栽培に反映します。
全量買い取り保証でも、すべて同じ価格ではありません
山麓園が生産を依頼した原料は、原則として全量を買い取ります。
成分などの品質目標を下回っても、買い取りを拒否するわけではありません。ただし、当初予定した上位商品の原料ではなく、別用途または下位ランクの原料として、価格を下げて仕入れます。
反対に、目標を上回り、成分、色、香り、味の評価が良ければ、プレミアムを加えて上位ランクとして評価します。
目標を上回る上位ランクとして評価し、品質に応じて買い取り価格を上げます。
目標を満たす想定した商品ランクの原料として、設定した条件で買い取ります。
目標を下回る買い取りは行いますが、下位ランクまたは別用途として価格を調整します。
全量買い取り保証は、農家のリスクをすべてなくす仕組みではありません。
販売先は確保されますが、最終単価は出来上がった品質によって変わります。一方で、優れた品質を一律価格で買うのではなく、結果を価格へ反映する仕組みでもあります。
栽培方法は山麓園だけで決めません
同じ品種でも、土壌、樹齢、樹勢、気候、設備が違えば、同じ茶にはなりません。
山麓園が品質目標を提示したうえで、農家の経験を尊重し、被覆期間、摘採時期、芽の成熟度、施肥や茶園管理について協議します。「誰が作ったか」も原料品質の一部だと考えているためです。
成分検査で何が分かるのか

抹茶の味は数値だけでは決まりません。しかし、成分を測ることで、感覚だけでは説明しにくいロット差を確認できます。
全窒素茶葉全体の品質傾向
遊離アミノ酸うま味・甘味に関わる
テアニン被覆茶らしいうま味
タンニン渋味と味の強さ
繊維芽の成熟度と口当たり
カフェイン苦味や刺激の一因
色合い緑の濃さと鮮やかさ
官能評価香り・味・余韻・用途
農研機構の研究でも、高価格帯の抹茶ほどテアニンが多い傾向や、緑色を示す指標に一定の特徴があることが報告されています。全窒素や遊離アミノ酸も、茶の品質を考える指標として利用されます。
数値が高いほど、すべての用途でおいしいとは限りません。
ストレートでは、うま味が多く渋味が少ない原料が好まれやすい一方、ラテでは、ある程度の苦味や茶の強さが牛乳や砂糖の中で長所になります。成分は順位表ではなく、用途を考える設計図です。
この方法のメリット
- 農家、品種、品質目標、生産条件を説明できる
- 完成後に探すだけでなく、必要な品質を事前に設計できる
- 農家が販売先を心配せず生産へ取り組みやすい
- 目標を超えた品質をプレミアム価格で評価できる
- 成分、色、香味の結果を翌年の栽培へ反映できる
- 品種別、用途別の商品づくりにつなげやすい
デメリットもあります
- 天候や生育状況によって予定数量を確保できないことがある
- 急な注文増加に合わせて同じ品質をすぐ増産できない
- 欠品時に他産地の茶を同じ商品として補充しにくい
- 検査、試作、農家との協議に時間と費用がかかる
- 全量を買い取るため、山麓園側も在庫と販売のリスクを負う
幅広く市場調達する方法の方が、供給量を確保しやすい場合があります。山麓園の方法は万能ではありません。
「他社より絶対においしい」と言いたいわけではありません
優れた茶商が市場から良い茶を選び、合組や火入れで仕上げた抹茶にも大きな価値があります。抹茶の好みも、うま味、香り、火入れ、苦味、色、用途によって変わります。
誰が、どの品種を、どの目標で作ったのか。出来上がった茶を、成分・色・香味でどう評価したのか。その過程を説明できることが、山麓園の抹茶の違いです。
評価結果を、翌年の畑へ戻す
成分検査は、完成品をランク分けして終わるためのものではありません。品種、被覆、摘採時期、芽の成熟度が結果にどう表れたかを考え、生産者へ共有し、翌年の栽培設計へ戻します。
一度きりの買い付けではなく、毎年少しずつ精度を高める。その積み重ねによって、山麓園は熊本の抹茶を育てていきたいと考えています。
執筆・監修:株式会社山麓園 代表取締役 甲斐宣史
熊本で日本茶・健康茶の製造販売を行い、農家との抹茶原料づくり、品種選定、成分分析、粉砕試験、商品開発に取り組んでいます。
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参考資料
- 農林水産省 関東農政局「一番茶の取引状況の現地調査及び意見交換」
- 農林水産省 近畿農政局「宇治茶入札販売会」
- 農研機構「国産抹茶の価格と化学成分含有量の関係」
- 農研機構「病害抵抗性・多収・高品質を兼ね備えた茶品種『りんめい』」
山麓園の生産・買い取り方法に関する記述は、当社の実際の取り組みに基づきます。成分値は品質を考える指標の一部であり、味の絶対的な優劣を保証するものではありません。
シリーズのご紹介
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