1.近年の荒茶生産量 都道府県別ランキング
日本の茶生産量は、都道府県ごとに大きな差があります。以下の表は、近年の荒茶生産量を都道府県別にランキングしたものです。
2023年順位 | 都道府県 | 生産量 (トン) |
---|---|---|
1 | 静岡県 | 27,200 |
2 | 鹿児島県 | 26,100 |
3 | 三重県 | 5,220 |
4 | 宮崎県 | 2,940 |
5 | 京都 | 2,640 |
静岡県と鹿児島県は、日本の茶生産をリードしています。これらの県は、茶の栽培に適した気候条件と長年の茶栽培の伝統があります。
2.静岡県と鹿児島県との生産量は僅差が続いている
静岡県と鹿児島県は、長い間、茶生産量のトップを争っています。以下のグラフは、近年の両県の茶生産量を比較したものです。
この競争は、両県の茶業界にとって刺激となり、品質の向上や生産技術の革新を促しています。
3.5年位前は、数年で入れ替わり、鹿児島県が1位になると言われていた
約5年前には、鹿児島県が数年のうちに静岡県を追い抜くと言われていました。以下のグラフは、過去10年間の両県の茶生産量の推移を示したものです。
しかし、現実にはその予測は実現しておらず、静岡県が依然としてトップの座を維持しています。
4.鹿児島県では、煎茶が抹茶の原料となる碾茶への転換が近年急速に進んでいる
なぜ、鹿児島県の煎茶生産量の伸びは、ブレーキがかかったように見えるのでしょうか?
その謎は、鹿児島県では、煎茶から碾茶への転換が急速に進んでるというのがひとつの要因と考えられます。以下のデータは、鹿児島県における碾茶生産量の推移を示しています。
2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
鹿児島県 | 578 | 832 | 800 | 1007 | 1392 | 1585 |
静岡県 | 510 | 530 | 455 | 442 | 435 | 505 |
2018年から2023年の碾茶生産量をみると、鹿児島県は約3倍に増加しているのに対し、静岡県はほぼ横ばいとなっています。鹿児島県が急速に煎茶から碾茶生産に転換している事実がうかがえます。
関連記事:2023年抹茶の原料である碾茶(てん茶)生産量1位は、実は鹿児島県。今後も急拡大の見込み
5.2024年は、鹿児島県で新たな大規模碾茶工場が稼働し、煎茶から碾茶への転換が1~2割程進んだと言われている
2023年までに、鹿児島県では碾茶の増産が続き、すでに全国1位の碾茶生産量を誇っていますが、2024年、鹿児島県では新たな大規模碾茶工場が5ヶ所で新規稼働し、煎茶から碾茶への転換がさらに進む見込みです。
この新しい工場の稼働により、鹿児島県の茶産業は新たなステージに進むと期待されています。
令和6年 | 令和5年 | 令和4年 | 令和3年 |
3954トン | 4418トン | 4509トン | 4521トン |
上表の令和3年~令和5年までのかごしま茶市場の取扱量は、横ばいなのに対し、令和6年はそれまでよりも11%流通量が減少しています。市場が流通量が荒茶生産量の全てではないので、参考値になりますが、単純計算では、新工場稼働により、およそ11%が荒茶から碾茶に転換したと推察されます。
*碾茶とは? 抹茶の原料となる茶葉です。煎茶と異なり、蒸した後に揉まずに乾燥させたもの。
6.まとめと結論
今後も静岡県が煎茶に関しては、日本一の産地
2024年の日本茶生産量ランキングは以下のようになると予想されます。
- 生産量1位は静岡県
- 鹿児島県は碾茶への生産転換が進んでいるため、荒茶生産量は減少する見込み
煎茶の生産量の差は非常に小さくなってきていますが、鹿児島県は煎茶から抹茶(碾茶)の生産に切り替える農家さんが大幅に増えることが見込まれ、また静岡県の抹茶生産は横ばいの見込みから、静岡県と鹿児島県の荒茶生産量の差は今後はさらに縮まったり、逆転する可能性は低く、静岡県が荒茶生産量1位を維持することが予想されます。詳しくは、こちらの記事もご覧ください。
参考文献
- 日本茶業協会 – 茶の統計
- 農林水産省 – 茶生産量データ
- 鹿児島県茶業協会 – 碾茶生産の現状
- かごしま茶通信 第283号(令和6年6月20日)
参考記事: 日本の茶生産量に関する詳細な分析