「お茶を淹れたら、思った以上に渋かった」
「同じ緑茶なのに、甘いお茶と渋いお茶があるのはなぜ?」
「高いお茶ほど渋くない?」
日本茶を飲んでいると、このような疑問を感じることがあります。
結論からいうと、お茶の渋味を大きく左右するのはカテキン類です。
ただし、
カテキンが多いか少ないかだけで、お茶の渋味がすべて決まるわけではありません。
実際のお茶の渋味は、
などが重なって決まります。
山麓園では長年、日本茶を仕入れ、製造・火入れ・合組・販売してきましたが、茶葉を見るときも「渋い品種だから渋い」「二番茶だから渋い」と一つの条件だけで判断することはありません。
品種 × 茶期 × 栽培 × 製法 × 淹れ方
まで見る必要があります。
この記事では、「お茶はなぜ渋くなるのか?」を入口として、日本茶の渋味を体系的に解説します。
緑茶の渋味に大きく関係するのが、茶葉に含まれるポリフェノールの一種であるカテキン類です。
代表的なものには、
があります。
中でもEGCGやECGなどのガレート型カテキンは、強い渋味に関係する成分として知られています。
2025年の研究でも、EGCGはEGCより唾液タンパク質との相互作用が強く、より強い渋味を示すことが確認されています。
ただし、お茶の「渋味」は砂糖の甘味や塩の塩味とは少し違います。
日常会話では、
「苦い」
「渋い」
をまとめて表現することがありますが、感覚としては別物です。
舌の苦味受容体で感じる味です。
緑茶では、
などが関係します。
口の中が、
ように感じる感覚です。
現在では、茶などに含まれるポリフェノールが唾液タンパク質と相互作用し、口内の潤滑性が低下することが、渋味を感じる主要な仕組みの一つと考えられています。
つまり、
渋味は単なる「味」ではなく、口当たりを含む複雑な感覚
なのです。
適度な渋味なら、緑茶らしい爽快感や後味になります。
強くなりすぎると「飲みにくい」と感じます。
お茶の記事や成分表を見ると、
「タンニン」
という言葉もよく出てきます。
山麓園の茶成分分析計でも「タンニン」という測定項目があります。
茶業では昔から、茶の渋味成分をまとめてタンニンと呼ぶことがありますが、現在では緑茶の主要なタンニン成分としてカテキン類を考えるのが分かりやすいでしょう。
ただし、
タンニン○%=EGCG○%
ではありません。
例えば山麓園の分析で「タンニン16.1%」と表示されたとしても、それはEGCGだけを個別分析した数値ではありません。
EGCG量を正確に知るには、個別の成分分析が必要です。
大きく整理すると、次のようになります。
| 条件 | 渋味の傾向 |
|---|---|
| 一番茶 | 比較的穏やか |
| 二番茶・三番茶 | 強くなりやすい |
| 被覆栽培 | 渋味を抑えやすい |
| 露地栽培 | 渋味が出やすい |
| さえみどり・あさつゆ等 | 比較的穏やか |
| さやまかおり等 | 力強い渋味が出やすい |
| 浅蒸し・普通蒸し | 渋味や香りが明瞭になりやすい |
| 深蒸し | 渋味が丸く感じられやすい |
| 釜炒り茶 | 蒸し製煎茶より渋味が穏やかな傾向 |
| 高温抽出 | 渋味が増えやすい |
| 低温抽出 | 渋味を抑えやすい |
| 長時間抽出 | 渋味が増えやすい |
| 短時間抽出 | 渋味を抑えやすい |
つまり、
「渋くないお茶が欲しい」なら、茶葉の選び方と淹れ方の両方を変える
のが効果的です。
お茶の渋味を大きく左右するのが摘採時期=茶期です。
冬を越した茶樹から、春に最初に伸びた新芽を摘みます。
一般的に、
が多く、旨味が感じられやすい傾向があります。
一番茶を摘んだあと、気温や日照量が増える時期に再び伸びた芽です。
茶期が進むにつれて、
する傾向があります。
そのため、
一番茶=旨味型
二番茶・三番茶=渋味・力強さが出やすい
という違いが生まれます。
山麓園では2026年、実際に茶原料の成分を測定しています。
一番茶5検体と二番茶3検体の平均では、
| 成分 | 一番茶 | 二番茶 |
|---|---|---|
| 遊離アミノ酸 | 5.18% | 3.33% |
| テアニン | 2.98% | 1.90% |
| タンニン | 7.02% | 9.90% |
となりました。
つまり、二番茶では、
テアニンが少なくなり、タンニン値は約41%高くなっています。
さらに別の比較では、
でした。
今回測定した三番茶は、一番茶のおよそ2.6倍のタンニン値です。
もちろん、これは同一茶園・同一品種だけを茶期別に比較した試験ではないため、差のすべてを茶期だけで説明することはできません。
しかし、従来の茶研究で知られている、
茶期が遅くなるほどアミノ酸が減り、渋味成分が増えやすい
という方向と一致しています。
一番茶・二番茶について詳しく知りたい方は、
知覧抹茶「藤」と「葵」はどちらを選ぶ?679件の評価と成分データで分かった目的別の答え
一番茶と三番茶の実測比較は、
一番茶と三番茶では、味や価格だけでなく、茶葉に含まれる成分にも違いがあります
で詳しく紹介しています。
日本茶には「やぶきた」以外にも多数の品種があります。
同じ一番茶、同じ煎茶でも、品種が違えば味はかなり変わります。
農研機構の研究でも、主要カテキン類の含量には品種間差があることが確認されています。
山麓園でも、実際に品種別の茶葉を仕入れて飲み比べると、渋味の強さには明らかな違いがあります。
さやまかおりは、
緑茶らしい力強い渋味を出しやすい品種
の一つです。
伊藤園も、さやまかおりについて「カテキン含量が多い」ことを特徴として挙げています。
山麓園で仕入れた茶葉でも、露地栽培のさやまかおりは、
が出やすい印象があります。
ただし、
渋い=悪いお茶
ではありません。
適度な渋味は、食事と合わせたときの爽快感にもなります。
さやまかおりについては、
さやまかおりとは?露地・被覆・抹茶で変わる味を茶商が解説
で詳しく紹介しています。
反対に、比較的渋味が少なく、旨味を感じやすい代表的な品種がさえみどりです。
農研機構の資料では、さえみどりは遊離アミノ酸が多く、タンニン含量が少ない例が報告されています。
山麓園でも、さえみどりは、
を生かしやすい品種として扱っています。
詳しくは、
さえみどりがお茶の中で最も高級?! 品種別に検証しました
をご覧ください。
「あさつゆ」は、古くから「天然玉露」と呼ばれることのある品種です。
農林水産省の品種紹介でも、
緑色が鮮やかで、渋味が少なく、旨味が強い
品種として紹介されています。
被覆しなくても甘味・旨味を感じやすいため、
「渋い緑茶が苦手」
という方に向く品種の一つです。
詳しくは、
あさつゆとは?天然玉露と称される品種の特徴と魅力
をご覧ください。
抹茶向け品種として近年注目されている「せいめい」も興味深い品種です。
農研機構による比較では、被覆栽培したせいめいは「さえみどり」「やぶきた」より、
という結果が報告されています。
つまり、
「品種」は渋味を考えるうえで無視できない要素
です。
代表的な日本茶34品種については、
日本茶の品種ガイド|味・香り・向く製法から選ぶ代表34品種
にまとめています。
次に重要なのが栽培方法です。
日本茶には大きく分けて、
太陽の光を十分に当てて育てる方法。
摘採前に黒いネットなどで茶園を覆い、日光を遮る方法。
があります。
玉露、かぶせ茶、碾茶などで使われる方法です。
茶葉では、光の影響によって成分バランスが変化します。
被覆すると一般に、
方向に変化します。
農研機構の被覆研究でも、カテキンやテアニンが被覆によって変化することが確認されています。
そのため一般的には、
露地茶=爽やかな香りと渋味
被覆茶=旨味が強く、渋味が穏やか
という傾向になります。
これは実際の茶葉でもよく分かります。
山麓園で扱ってきたさやまかおりは、露地では力強い渋味が特徴ですが、被覆すると渋味がやわらぎ、
とのバランスがよくなります。
つまり、
「さやまかおりは渋い」
という説明だけでは十分ではありません。
より正確には、
「さやまかおりは渋味が出やすい品種だが、被覆すると印象はかなり変わる」
となります。
日本茶の栽培・製法全体については、
お茶の種類 一覧|全28種を詳しく解説
でも紹介しています。
次は製法です。
日本の煎茶は、生葉を蒸して酸化酵素の働きを止め、その後に揉んで乾燥させます。
その「蒸し時間」によって、
などに分かれます。
蒸し時間が短いお茶は、茶葉の形が比較的残ります。
味わいとしては、
傾向があります。
山間地の香りの良い煎茶などでは、この特徴を生かすことがあります。
深蒸し茶は、普通煎茶より長く蒸します。
長く蒸すことで葉の組織が崩れ、茶葉は細かくなります。
そのため抽出すると、
という特徴があります。
「成分が出やすいなら、逆に渋くなるのでは?」
と思うかもしれません。
ここが面白いところです。
茶の渋味はカテキン量だけでは決まりません。
研究では、ガレート型カテキンの渋味がペクチンとの複合体形成によって抑えられることが示されています。
さらに釜炒り茶と煎茶を比較した研究では、
煎茶は蒸熱時間が長くなるほど渋味が緩和される
ことが確認されています。
研究者は、水溶性ペクチンの増加などが関係すると考察しています。
つまり、
渋味は「カテキンが何mgあるか」だけでは説明できない
のです。
深蒸し茶の「濃いのにまろやか」という味わいには、こうした成分同士の関係も影響していると考えられます。
普通煎茶・浅蒸し茶・深蒸し茶の詳しい違いは、
お茶選びの大きなポイント!普通煎茶と深蒸し茶の違い
をご覧ください。
日本の緑茶の大部分は「蒸し製」ですが、九州には釜炒り茶という伝統製法があります。
摘んだ茶葉を蒸すのではなく、熱した釜で炒って酸化酵素の働きを止めます。
味覚センサーを使って釜炒り茶と煎茶を比較した研究では、
釜炒り茶の方が煎茶より渋味が少ない
という結果が得られています。
釜炒り茶は、
が特徴です。
詳しくは、
釜炒り茶はどんなお茶?一般の蒸し製緑茶にはない香ばしさが魅力
で解説しています。
ここからは、家庭でできる対策です。
茶葉を変えなくても、
淹れ方だけで渋味はかなり変えられます。
最も効果が分かりやすいのが湯温です。
味覚センサーを用いた研究では、
5℃、40℃、100℃と抽出温度を上げるにつれて、渋味強度も増加する傾向が確認されています。
つまり、
熱湯で淹れるほどカテキン類が出やすくなり、渋味も強くなりやすい
ということです。
そのため、
「このお茶、少し渋いな」
と思ったら、まずは湯温を下げてみてください。
渋味を抑えたい場合、一般的な煎茶なら、
65~75℃程度
から試すと分かりやすいでしょう。
例えば、
茶葉:5~6g
湯量:180~200ml
湯温:70℃前後
抽出:約60秒
を基準にします。
それでも渋ければ、
70℃ → 65℃
へ下げます。
逆に、
「もう少し香りや渋味が欲しい」
なら75~80℃へ上げます。
温度について詳しくは、
なぜお湯の温度でお茶の味が変わるのか?美味しい温度は?
をご覧ください。
温度と同じくらい重要なのが抽出時間です。
長く待てば待つほど、
茶葉に残っている成分がさらに溶け出します。
特に、
が重なると、かなり濃く渋いお茶になります。
普通煎茶なら1分前後を基準にし、深蒸し茶なら葉が細かく成分が出やすいため、
30~60秒程度
でも十分な場合があります。
これはよくある失敗です。
深蒸し茶は茶葉が細かく、成分が短時間で出ます。
そのため、
普通煎茶と同じように、
「80℃で1分半」
などとすると、かなり濃くなることがあります。
深蒸し茶なら、
少し短めに抽出する
のがポイントです。
同じ200mlのお湯でも、
では、当然味の濃さが違います。
「高級なお茶だからたくさん入れた方がおいしい」
とは限りません。
渋味が強いと感じた場合は、
茶葉を1~2割減らす
だけでもかなり変わります。
一煎目を淹れたあと、急須にお湯が残っていると、その間も抽出が続きます。
すると、
原因になります。
そのため、
最後の一滴まで注ぎ切る
のが基本です。
実際の急須での淹れ方については、
来客時のお茶の出し方・淹れ方|温度・分量・抽出時間
で詳しく紹介しています。
「緑茶は好きだけれど、渋味は苦手」
という方には、水出しもおすすめです。
低温ではガレート型カテキンなどが熱湯ほど抽出されにくいため、
を感じやすいお茶になります。
一番茶、被覆茶、さえみどり、あさつゆなどとの相性は特によいでしょう。
詳しくは、
水出しで美味しいお茶を選ぶには?淹れ方は?お茶屋さんが解説
をご覧ください。
すでに淹れてしまったお茶が渋すぎる場合は、
最も簡単です。
濃度を下げれば渋味も弱くなります。
熱いうちと冷めた後では、味の感じ方も変わります。
一煎目より高めの湯を使う場合でも、二煎目は10~20秒程度など短くします。
複数の条件を一度に変えるより、
まず10℃下げる
のが最も違いを確認しやすい方法です。
渋味が苦手なら、次のような条件を探すと選びやすくなります。
二番茶・三番茶より、旨味成分が多く渋味成分が少ない傾向があります。
「かぶせ茶」
「玉露」
「被覆○日」
などの表示が目安です。
例えば、
など。
まろやかでコクのある味を求めるなら選択肢になります。
購入後でも自分で調整できます。
渋味は必ずしも避けるべきものではありません。
昔ながらの日本茶らしい、
爽やかで口を引き締める味
を好む方も多くいます。
その場合は、
などが選択肢になります。
肉料理、油のある料理、お菓子の後などには、適度な渋味がむしろ心地よく感じられることもあります。
高級煎茶では、
などによって渋味が抑えられていることが多くあります。
そのため、
高級茶ほど甘く、低価格茶ほど渋い
ように見えることがあります。
しかし、これを単純な品質ランキングと考えるのは正確ではありません。
例えば、
力強い露地のさやまかおりは、渋味があっても非常に良質な場合があります。
二番茶や三番茶も、
では、その力強さがメリットになります。
深蒸し茶と浅蒸し茶にも、それぞれ違った魅力があります。
つまり、
「渋くない=良い、渋い=悪い」ではなく、何を求めるか
なのです。
長年さまざまな日本茶を仕入れていると、
「このお茶はなぜ渋いのか?」
という質問に、一言で答えることが難しいことが分かります。
例えば同じ「やぶきた」でも、
によって、まったく違うお茶になります。
品種だけではありません。
製法だけでもありません。
値段だけでもありません。
お茶の味は、
茶樹が持つ品種特性
+育った環境
+摘採時期
+栽培方法
+製造方法
+最後の淹れ方
によって完成します。
だから日本茶は面白いのだと思います。
主な原因はカテキン類です。
特にEGCG、ECGなどのガレート型カテキンは強い渋味に関係します。
ただし、実際に感じる渋味は品種、茶期、栽培、製法、抽出条件などによって変わります。
一般的にはその傾向があります。
ただし、カテキン量だけで感覚的な渋味が決まるわけではありません。
水溶性ペクチンなど、ほかの成分との相互作用も関係します。
一番茶は一般に、テアニンを中心とする遊離アミノ酸が多く、後期の茶に比べてカテキン・タンニン系成分が少ない傾向があります。
そのため、旨味・甘味を感じやすくなります。
一番茶の後、気温と日照量が増えた環境で伸びるため、一般にテアニンなどのアミノ酸が減少し、カテキン類が増えやすくなります。
山麓園の2026年実測値でも同じ方向の差を確認しています。
さえみどりは、アミノ酸が多く、タンニン・カテキン類が比較的少ない傾向を持つ品種です。
そのため甘味・旨味を感じやすいお茶になります。
一般に浅蒸し茶より渋味がまろやかに感じられる傾向があります。
長い蒸熱による水溶性ペクチンの増加なども、渋味を和らげる一因と考えられています。
ただし茶葉が細かく成分が出やすいため、長時間抽出すると濃くなります。
一般的な煎茶なら65~75℃程度が使いやすい目安です。
もっと甘味・旨味を重視する場合は60~65℃程度まで下げる方法もあります。
一方、香りや爽快な渋味を楽しみたい場合は75~80℃以上へ上げます。
お茶が渋い最大の理由は、
カテキン類
です。
しかし、
「カテキンが多いから渋い」
だけでは、お茶の味は十分に説明できません。
渋味は、
一番茶より二番茶・三番茶で強くなりやすい。
さやまかおりのように力強い品種もあれば、さえみどり・あさつゆ・せいめいのように渋味が穏やかな品種もある。
露地栽培ではカテキンが増えやすく、被覆栽培では旨味を残して渋味を抑えやすい。
浅蒸し・深蒸し・釜炒りによって、同じ茶葉でも渋味の感じ方が変わる。
高温・長時間ほど渋味が出やすく、低温・短時間ほど抑えやすい。
という複数の条件で決まります。
もし今飲んでいるお茶が渋すぎるなら、
まず湯温を10℃下げてみてください。
それだけでも味はかなり変わります。
それでも渋ければ、抽出時間を短くする。
さらにお茶そのものを選べるなら、
一番茶 × 被覆 × 渋味の少ない品種
を選ぶ。
反対に、日本茶らしい爽快な渋味を楽しみたいなら、
露地茶 × 力強い品種 × 少し高めの湯温
という選び方もできます。
「渋味」は、お茶の欠点ではありません。
渋味を出すのか、抑えるのかを理解すると、日本茶は自分の好みに合わせて味を作れる飲み物になります。
この記事は、日本茶・健康茶の製造販売を行う株式会社山麓園が、茶葉の仕入れ・製造・販売経験をもとに解説しています。お茶の魅力、健康効果などについて情報を発信。楽天やヤフーショッピングの店長としても活躍中。食前にサラダを山盛り、高温調理の食品は避け、米は玄米と決めていて健康オタクでもあります。