お茶のイメージ
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品種で大きな違い!お茶の選び方その4

実はお茶には品種がたくさんあった!

お茶の品種について

私たちが普段飲むお茶にも、実はたくさん品種があります。しかしながら、全国の75%前後のお茶が「やぶきた」という静岡生まれの品種になります。

やぶきたは、1953年に品種登録され、その後を国が推奨、また品質も優秀だったため、在来種からやぶきたへ改植が進みました。私たち茶業者にとっても、やぶきたの品種的信頼性はゆるぎないものであり、他の品種よりも高値で取引します。味に安定感があるというか、失敗が少ないので、安心感が違います。農家にとっても、やぶきたに比べて何割も安く買いたたかれたり、値段が付かなかったなどのリスクは避けたいはずです。こうして、日本のお茶の多くはやぶきたばかりになっています。

しかしなから、お茶は摘むタイミングが最も重要なことから、農家としては、やぶきたよりも早く収穫できる品種と遅く収穫できる品種もあった方がより効率よく、良い芽の状態のお茶を摘むことができます。また、産地によって気候、風土が異なりますので、その土地に適した品種や多収で高品質な品種というのも開発されています。

こうした動きが奨励され、やぶきた一辺倒の時代から徐々に変化もしています。優秀な品種の登場で、やぶきた以外のお茶は低評価=お金にならないという現実も変化してきましたので、これからも品種の多様化は進んでいくでしょう。

それでは、お茶の品種が違うとどうなるのかということでしょう?

農家にとっては、病気の耐性や早生か晩成かなども重要ですが、消費者にとってはお茶そのものの色彩や風味がどうなのかが重要なポイントです。

一般に購入できるお茶の茶袋には、品種名が書いていないので、消費者の方にはなじみがないかもしれません。(多くがブレンドされていますので)しかし、われわれ茶業者が、市場に上場されるお茶のリストを見て一番注目するは、品種と生産者名です。

同じ生産者でも品種が変われば、全く違うお茶になります。評価価格も何割も変わってきます。

それだけ品種というものは、お茶の特徴を見るうえで重要な指標となってきます。

品種の特徴を知ることで、お好みのお茶にたどり着く手掛かりになれば幸いです。

早生品種 ゆたかみどり

全品種の中でやぶきたの次に(2番目)栽培面積が広く、早生品種の代表となっています。温暖な気候が栽培に適していることから、多くは鹿児島県で栽培され、鹿児島茶の代表品種でもあります。

ゆたかみどりは、苦みを抑えるために被覆して深蒸しで製造するのが定石です。やぶきたとは栽培と製造が異なるので、栽培に慣れている鹿児島産がおすすめです。

年によって出来に差はありますが、良い芽のお茶はかなりクオリティーが高いのも特徴です。

濃い水色と飲みやすくふくよかな香りが特徴です。

最近の研究では、高機能品種として取り上げられ、免疫細胞(マクロファージ)を活性化させるエピガロカテキンの割合が多いのも特徴です。

早生品種 さえみどり

鹿児島県枕崎市生まれの品種で「あさつゆ」と「やぶきた」を掛け合わせて誕生しました。競馬でいうなら、ベタな配合ですが、勝つのはやっぱり良血統。味わい風格が高貴な品種です。

鹿児島県、宮崎県で多く栽培され、その他の地域でも拡大中です。

最も勢いのある品種がこの「さえみどり」ではないでしょうか?栽培面積は全体のまだ2%と言われていますが、やぶきたからサエミドリへの改植が進んでいます。

やぶきたよりも早く摘める=高値で売れるという他に、品質が優れているという点が最も評価されるポイントだと思います。

国が出資した品種別品質評価試験では優良55品種中、なんと1位。総合的な実力はナンバーワンでしょう。

 

まろやかなお茶は、被覆栽培(玉露、かぶせ茶)、渋みのあるお茶は露地栽培

玉露は甘みと旨みが凝縮した高級品です。なぜ玉露は甘みがあって、お値段も高いのでしょうか?

お茶の葉に日光が当たると、テアニンがカテキンに変化します。つまり、太陽の光をしっかり浴びた葉は「旨みが減少し、渋みが増す」ということになります。

そこで、人工的に日光を遮ることで「テアニン→カテキン」の変化を抑制し、渋みを抑制し、旨みの多いお茶にしていきます。これを被覆栽培といいます。

お茶の最高級品と言われる玉露は、お茶畑に茶棚をつくり、新芽が少し開き始めたころから、天井を藁などで覆い、その後3週間ほどで手摘みで収穫されます。

普通の煎茶に比べて栽培と管理に非常に手間がかかるため、高価となっています。後述のかぶせ茶と同じ製法で作ったものを玉露として販売している地域もありますが、反対意見も多く議論を呼んでいます。

 

かぶせ茶は玉露の簡易版と言ったところで、煎茶と玉露の中間的なお茶になります。

茶摘み前の5日~10日ほどにお茶の木に直接黒い覆いをかぶせて、日光量を調整します。

かぶせ茶は三重県が生産量一位となっていますが、鹿児島茶の一番茶もほとんどがかぶせ茶になります。

被覆の様子

*写真:知覧町の茶畑

被覆している様子2 

*枕崎市、被覆開始初日の様子。被覆には人手がかかります。

まとめ

甘くてまろやかなお茶を好みの方は、

①深蒸し茶 :渋みや苦みが少なく、まろやかな味わいに

②一番茶 :苦みが少なく旨みが多い

③かぶせ茶 : 旨みが増し渋みが減る

④早摘みのお茶(品質):旨み成分が多い

この4つの条件を満たすものを探しましょう。

他に産地や品種も参考にされるとよいと思います。

産地は、一般的に知覧(頴娃、川辺)茶、枕崎茶、有明(志布志)茶、鹿屋、大根占他などが深蒸し茶が多い産地です。鹿児島県以外では、都城(宮崎)や岳間茶(熊本)など。

品種は、さえみどり、あさつゆ、さえあかり(さえみどり系)、つゆひかり(あさつゆ系)、めいりょくなどがアミノ酸の割合が高く、カテキンは少ない品種です。

・やぶきたとその他の品種の価格の違いなどは別ページで解説

渋みのあるお茶が好きな方は?お茶選びのポイント!

カテキン、特にエピカテキンガレード、エピガロカテキンガレートが主な渋み成分となります。2番茶が最もカテキンが多くなりますが、渋みがあっても苦いお茶はあまり好まれません。心地よい渋みと旨み成分のバランスよい茶葉が価値の高い美味しいお茶になります。

ポイント

①普通煎茶 :

②一番茶 :カテキンとテアニンのバランスが良く、苦みが少ない

③露地(露天)栽培 :カテキンが多い

④最盛期ごろのお茶(八十八や摘みなど):品質と成分バランスが良い

品種はやはり、「やぶきた」や「さやまかおり」などは、よい渋みがあります。

 

 

茶袋を見て触って品質をチェック

茶業者はお茶の葉を見て触るだけで、茶葉の品質と特性を判断します。

しかしながら、消費者の方は、茶袋を見ても書いてある情報の他には、お茶の品質についてなかなか判断材料がないかもしれません。

そこで、良質なお茶かどうかの比較ポイント。

①嵩(かさ)を比べる。良質なお茶ほど重い傾向にあります。品質の低い3番茶などは同じ重さでも嵩が3倍以上になることも。同じ100gのお茶があったら、どちらの方が多く見えるかを判断します。少なく見えた方が、重いお茶。より品質が高い可能性が高くなります。

②感触をみます。良いお茶ほど柔らかく滑らかな手触りになります。逆に品質の低いお茶は固く、バサバサした感触です。そこで袋ごしでわかりにくい部分もあるかと思いますが、柔らかそうな感触のあるお茶を選ぶとよいお茶の可能性が高まります。

・関連記事 日本茶には、どんな種類があるのかを別ページで解説しています。

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