鮮やかな緑色と、渋みの少ない上品な甘みで知られる茶品種「さえみどり」。高級煎茶や品種茶の商品で見かけることも増え、「さえみどりは日本茶の中で最も高級な品種なの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
結論から言えば、さえみどりは、日本を代表する高品質品種の一つです。過去の鹿児島県産一番茶の取引価格を比較すると、やぶきたを大きく上回った年もあり、市場でも高く評価されてきました。
ただし、品種がさえみどりだからといって、すべてのお茶が最高級になるわけではありません。お茶の品質と価格は、茶期、摘採時期、栽培方法、産地、製茶技術などによって大きく変わります。
さえみどりは、日本茶の代表品種である「やぶきた」を母親、「天然玉露」とも呼ばれる「あさつゆ」を父親として交配し、育成された品種です。1991年に品種登録されました。
やぶきたが持つ栽培性や品質と、あさつゆが持つ強いうま味や鮮やかな水色を受け継いだことから、しばしば「お茶のサラブレッド」と表現されます。
摘採時期はやぶきたより4日ほど早い早生品種です。温暖な鹿児島県や宮崎県を中心に普及し、現在では熊本県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県など、九州各県でも栽培されています。
さえみどりの大きな特徴が、名前のとおり「冴えた緑色」です。煎茶に仕上げたときの茶葉は鮮緑色になりやすく、お湯を注いだときも黄色みの少ない青緑色の水色が出やすい品種です。
特に若い一番茶を適切に被覆し、深蒸し製法で仕上げたものは、目を引くほど濃く鮮やかな緑色になることがあります。贈答用や上級煎茶では、味だけでなく見た目の美しさも評価に影響するため、さえみどりの色は大きな強みになります。
鹿児島県の品種特性資料では、さえみどりはアミノ酸含量が高く、カテキン含量が少ないため、甘みを感じやすい品種とされています。
緑茶のうま味にはテアニンをはじめとする遊離アミノ酸が関係し、渋みにはカテキン類が関係します。そのため、良質なさえみどりは、渋みや苦みが前に出にくく、やわらかく上品なうま味を楽しめます。
低めの温度で丁寧に淹れると、とろみを感じるような甘みとうま味が引き出されます。一方、しっかりした渋みや強い焙煎香を好む方には、やや穏やかに感じられる場合もあります。
上級煎茶では、鮮やかな色、若芽の香り、うま味、渋みの少なさなどが評価されます。さえみどりは、これらの要素を比較的備えやすい品種です。
早摘みの一番茶や被覆栽培との相性もよく、適切に栽培・製茶されたものは、品評会向けのお茶や高価格帯の商品にも使われます。このような背景から、「さえみどり=高級品種」という印象が定着していきました。
当店では以前、品種の多様性が高い鹿児島県の一番茶について、2018年と2019年の品種別平均価格を比較しました。
次の表は、各年のやぶきたの平均価格を100とした場合の比率です。
| 品種 | 2018年 | 2019年 | 2年間平均 |
|---|---|---|---|
| さえみどり | 153% | 187% | 170% |
| おくみどり | 131% | 119% | 125% |
| あさつゆ | 116% | 126% | 121% |
| ゆたかみどり | 111% | 129% | 120% |
| あさのか | 113% | 124% | 119% |
| やぶきた | 100% | 100% | 100% |
| かなやみどり | 82% | 80% | 81% |
この調査では、さえみどりの2年間平均は、やぶきたの170%でした。比較した主要7品種の中では、さえみどりが最も高い価格で取引されていました。
この結果から、少なくとも当時の鹿児島県産一番茶市場では、さえみどりが品質面、需要面の両方で高く評価されていたことが分かります。
ご注意ください
この価格比較は2018年と2019年の鹿児島県産一番茶を対象にした過去のデータです。全国の取引価格や現在の相場を示すものではありません。品種の出来、収穫量、需要、茶期によって価格差は毎年変動します。
さえみどりの評価の高まりは、栽培面積にも表れています。
| 品種 | 2025年の栽培面積 | 鹿児島県内の割合 |
|---|---|---|
| やぶきた | 2,291ha | 28.1% |
| ゆたかみどり | 2,068ha | 25.4% |
| さえみどり | 1,305ha | 16.0% |
| あさつゆ | 441ha | 5.4% |
| おくみどり | 381ha | 4.7% |
鹿児島県におけるさえみどりの栽培面積は、1990年には207ha、2000年には681ha、2010年には963ha、2025年には1,305haまで増加しました。
現在では鹿児島県の茶園の16%を占め、やぶきた、ゆたかみどりに次ぐ主要品種になっています。単に希少だから高いという段階から、品質と需要が認められ、産地を代表する品種の一つへ成長したといえるでしょう。
ここで注意したいのは、高品質な品種を使えば、必ず高級なお茶になるわけではないという点です。
お茶の最終的な品質や価格には、主に次のような条件が影響します。
例えば、適期を過ぎて硬くなったさえみどりの二番茶より、適期に摘まれ、丁寧に製造されたやぶきたの一番茶の方が高く評価されることは十分にあります。
また、品種名が同じでも、100g数百円の日常茶から、品評会クラスの高級茶まで品質には大きな幅があります。商品を選ぶ際は、品種名だけでなく、茶期、産地、摘採時期、栽培方法なども確認することが大切です。
| 品種 | 味わいの傾向 | 水色・外観 | おすすめの方 |
|---|---|---|---|
| さえみどり | 渋みが少なく、甘みとうま味が強い | 鮮やかで青みのある緑色 | まろやかで上品なお茶が好きな方 |
| やぶきた | 香り、うま味、渋味のバランスがよい | 明るい緑色 | 日本茶らしい味を幅広く楽しみたい方 |
| ゆたかみどり | 濃厚でコクがあり、製法によって渋みも出る | 深蒸しで濃い緑色 | 力強く濃い味が好きな方 |
| あさつゆ | 強いうま味と独特の甘み | 濃厚で鮮やかな緑色 | 玉露のような甘みを求める方 |
| おくみどり | 上品な香りとすっきりしたうま味 | 濃緑色になりやすい | 後味のよい上品なお茶が好きな方 |
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さえみどりの甘みとうま味を楽しむには、熱湯ではなく、やや低めの温度で淹れるのがおすすめです。
低温で淹れることで渋みを抑え、さえみどりらしい甘みとうま味を引き出せます。二煎目は少し高めの温度で短時間抽出すると、爽やかな香りと適度な渋みを楽しめます。
深蒸しタイプは茶葉が細かいため、抽出時間を少し短くしてください。水色が濃く出ても、必ずしも味が濃すぎるわけではありません。見た目だけで判断せず、実際に味を確かめながら調整するとよいでしょう。
さえみどりは、鮮やかな水色、アミノ酸の多さ、渋みの少なさ、上品な甘みを備えた、日本を代表する高品質品種です。
2018年と2019年の鹿児島県産一番茶の比較では、やぶきたの平均価格を大きく上回り、主要品種の中で最も高く取引されていました。栽培面積も長期的に増加しており、生産者、茶商、消費者から高く評価されていることが分かります。
そのため、さえみどりは「高級品種の代表格」と呼んでよいでしょう。ただし、「さえみどりなら必ず最高級」「常に最も高い」とまではいえません。
産地やブランド名だけでなく、品種にも注目してお茶を選ぶと、日本茶の味わいの違いをさらに深く楽しめます。渋みの少ない、まろやかで美しい緑色のお茶を探している方には、さえみどりは特におすすめの品種です。
※品種別の取引価格は2018年、2019年の鹿児島県産一番茶を対象に当店が整理した過去の参考データです。現在の価格や全国すべての取引を示すものではありません。栽培面積は鹿児島県の2025年時点の資料を使用しています。