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ほうじ茶と紅茶の違いは?原料・製法・味・カフェインを茶商が解説

同じ茶葉なのに香りも味も別物になる理由を茶商が解説

ほうじ茶と紅茶。

一方は香ばしく、もう一方は華やか。

色も香りも味もまったく違うので、

「そもそも別の植物では?」

と思う方もいるかもしれません。

ところが実は、

ほうじ茶も紅茶も、基本的には同じチャノキ(Camellia sinensis)の葉から作ることができます。

同じ植物なのに、なぜここまで違うのか。

その答えは、

茶葉を摘んだあと、どのタイミングで熱を加え、どのように香りを作るか

にあります。

簡単に言えば、

ほうじ茶は「緑茶を焙煎して香りを作るお茶」。

紅茶は「茶葉の酸化を進めて香りを作るお茶」。

この違いを知ると、ほうじ茶と紅茶の味の違いがかなり分かりやすくなります。


先に結論|ほうじ茶と紅茶の一番大きな違いは「製法」

ほうじ茶と紅茶の違いを簡単にまとめると、次のようになります。

比較ほうじ茶紅茶
原料煎茶・番茶・茎などの緑茶チャノキの生葉
分類緑茶(不発酵茶)の一種発酵茶
大きな工程緑茶を焙煎する茶葉を萎凋・揉捻し酸化させる
香り香ばしい、ナッツ、トースト、穀物系花、果実、蜂蜜、モルティーなど
水色黄褐色~茶褐色赤褐色~紅色
すっきり、香ばしい、渋味穏やか甘味、コク、渋味、華やかさ
カフェインの標準成分表値20mg/100ml30mg/100ml
向いている飲み方ストレート、食中、ラテストレート、ミルク、レモンなど

同じ「茶」でも、作り方が違えば、ここまで別の飲み物になります。


そもそも、ほうじ茶は「緑茶」

ほうじ茶の茶色い見た目だけを見ると、

「これが緑茶?」

と思うかもしれません。

しかし、ほうじ茶は分類上は緑茶の一種です。

頭(あたま)と呼ばれる茶葉 玄米茶屋ほうじ茶などの原料にも使用される

煎茶や番茶、茎など、いったん緑茶として作られた原料を強い火で焙煎して作ります。

緑茶は、生葉を摘んだ後の比較的早い段階で、

蒸す、または釜で炒る

ことで茶葉の酸化酵素の働きを止めます。

そのため、葉の緑色や緑茶らしい成分バランスが残ります。

その緑茶をさらに強く焙煎したものが、ほうじ茶です。

つまり、

緑茶 → 焙煎 → ほうじ茶

という関係です。

山麓園でも、熊本県産一番茶を原料に自家焙煎してほうじ茶を作っています。

→ 関連記事
「ほうじ茶とは?原料・焙煎・香り・番茶との違いをお茶屋が解説」


紅茶は「酸化を止めずに進める」

紅茶は、ほうじ茶とは逆方向の作り方です。

茶葉を摘んだ後、

萎凋(いちょう)

と呼ばれる工程で葉をしおれさせます。

その後、揉むことで葉の細胞を壊し、茶葉の中の成分と酸化酵素を接触させます。

すると酸化反応が進み、

緑色だった葉が徐々に赤褐色へ変わり、紅茶らしい香りや味が生まれます。

十分に酸化させたところで熱を加えて乾燥し、反応を止めます。

流れを簡単にすると、

生葉

萎凋

揉捻

酸化

乾燥

紅茶

です。

ほうじ茶とは、

どこで熱を加えるか

が大きく違うわけです。

関連記事:紅茶はこうして作られる。工場の製造工程、販売までを解説


「紅茶は発酵茶」というけれど、納豆の発酵とは違う

熊本産 やぶきた 和紅茶

紅茶は日本では一般に、

「完全発酵茶」

と呼ばれます。

しかし、ここでいう「発酵」は、

ヨーグルトや納豆、味噌のように微生物が働く発酵とは少し違います。

紅茶の場合は主に、

茶葉自身が持つ酸化酵素による酸化反応

です。

農林水産省も、紅茶の「発酵」を「酵素による酸化」と説明しています。

そのため科学的には、

「紅茶は茶葉を十分に酸化させて作るお茶」

と理解すると分かりやすいでしょう。

これは意外と知られていない、ほうじ茶と紅茶の大きな違いです。


ほうじ茶の香りは「焙煎」で作る

では、ほうじ茶のあの香ばしい香りはどこから来るのでしょうか。

答えは、

高温での焙煎

です。

茶葉を強く加熱すると、糖やアミノ酸などが反応し、さまざまな香気成分が作られます。

研究では、ほうじ茶を焙煎すると、

ピラジン類、ピロール類、フラン類

などが増えることが確認されています。

中でもピラジン類は、

ほうじ茶の

  • 香ばしい
  • 甘い
  • ナッツのような
  • 炒った穀物のような

香りに大きく関係します。

ほうじ茶の香りは、

単に茶葉を焦がした匂いではありません。

高温加熱によって新しい香気成分が作られ、それらが組み合わさって独特の焙じ香になります。


山麓園で焙煎しても、10℃違うだけで香りが変わる

ほうじ茶を実際に作っていると、

「火を入れれば全部同じ香りになる」

わけではないことがよく分かります。

山麓園では、熊本県産一番茶を焙煎機で自家焙煎してきました。

焙煎機側を300℃に設定した試作では、

茶葉を約180℃で排出すると、かなり強い焙じ香。

約170℃で排出すると、焙じ香は少し穏やかになり、緑茶由来の味も残りました。

たった10℃ほどの違いでも、出来上がりはかなり変わります。

つまり、ほうじ茶の味は、

原料 × 焙煎温度 × 焙煎時間

で決まります。

同じ「ほうじ茶」という名前でも、商品によって味が違う理由の一つです。


紅茶の香りは「酸化」で作られる

一方、紅茶の香りの主役は焙煎ではありません。

茶葉を萎凋し、揉み、酸化を進めることで、

  • 熟した果実
  • 蜂蜜
  • モルト
  • 柑橘
  • マスカテル

などを思わせる複雑な香りが生まれます。

どんな香りになるかは、

  • 品種
  • 産地
  • 茶期
  • 萎凋の程度
  • 揉み方
  • 酸化時間
  • 温度・湿度

などで大きく変わります。

そのため、

ダージリンとアッサムでもまったく香りが違いますし、日本で作る「和紅茶」にも、軽くやさしいものから非常に華やかで濃厚なものまであります。

→ 関連記事
和紅茶とは?海外の紅茶にも負けない日本の紅茶の特徴と魅力


同じ茶葉から、ほうじ茶と紅茶を作れる?

理屈の上ではできます。

例えば「やぶきた」という日本で広く栽培されている品種があります。

やぶきたを緑茶として製造してから焙煎すれば、

やぶきたのほうじ茶。

同じやぶきたの生葉を萎凋・揉捻して酸化させれば、

やぶきたの紅茶。

になります。

実際、日本の和紅茶では、

  • やぶきた
  • さやまかおり
  • べにふうき
  • べにひかり

などさまざまな品種が使われています。

つまり、

品種だけで「緑茶用」「紅茶用」と完全に決まるわけではなく、製造方法でも大きく変わる

ということです。

これはお茶の非常に面白いところだと思います。

→関連記事:緑茶・紅茶・ウーロン茶・プーアル茶の違い


味の違い|ほうじ茶は「香ばしさ」、紅茶は「香りとコク」

飲み比べると、違いは明確です。

ほうじ茶

最初に感じるのは、

焙煎による香ばしさ。

強く焙じたものなら、

ナッツ、トースト、炒った穀物、カラメルなどを思わせることがあります。

味は比較的すっきりしていて、煎茶のような青い香りや強い渋味は前に出にくくなります。

そのため食事にも合わせやすいお茶です。

紅茶

紅茶は香りの幅が非常に広く、

花、果実、蜂蜜、モルトなど、品種や産地によって大きく違います。

味には、

紅茶らしい渋味とコク

があり、それがストレートだけでなくミルクや砂糖とも合います。


色が違うのはなぜ?

ほうじ茶も紅茶も茶色っぽいので、

「色は似ている」

と感じるかもしれません。

しかし、その茶色になる理由が違います。

ほうじ茶は、

焙煎によって葉が褐色になります。

一方、紅茶は、

茶葉の酸化が進むことで赤褐色になります。

つまり、

ほうじ茶の茶色=加熱による変化

紅茶の赤褐色=酸化による変化

という違いがあります。

同じように見えて、成り立ちは別物です。


カフェインはどちらが多い?

「ほうじ茶はカフェインがない」

と思われることがありますが、これは正確ではありません。

ほうじ茶にもカフェインは含まれます。

日本食品標準成分表をもとに農林水産省が示している浸出液の値では、

ほうじ茶:20mg/100ml

紅茶:30mg/100ml

です。

この数字だけを見ると、紅茶の方がやや多くなっています。

ただし注意したいのは、

抽出条件が違う

ことです。

成分表では、ほうじ茶と紅茶で使用する茶葉量、湯量、抽出時間が異なります。

また実際の商品でも、

  • 茶葉の部位
  • 茶期
  • 品種
  • 茶葉量
  • 抽出時間

によってカフェイン量は変わります。

したがって、

「ほうじ茶なら必ず紅茶よりカフェインが少ない」

とすべての商品に当てはめることはできません。

ただ、公的な標準値では、ほうじ茶の方が低い値になっています。


「焙煎するとカフェインが全部飛ぶ」は本当?

これもよくある誤解です。

強く焙煎することで茶葉の成分バランスは変化しますが、

ほうじ茶にもカフェインは残っています。

そのため、

「カフェインゼロのお茶が欲しい」

という場合に、普通のほうじ茶をノンカフェイン飲料として扱うのは適切ではありません。

カフェインを避けたい場合は、麦茶やルイボスティーなど、もともとカフェインを含まない原料のお茶を選ぶ方が確実です。


ほうじ茶と紅茶、どちらがミルクに合う?

これは、

どちらも合います。

ただし、ミルクと合う理由が少し違います。

ほうじ茶ラテ

ほうじ茶は、

焙煎香と乳製品のコク

の相性が良いお茶です。

牛乳と合わせることで、香ばしさがカフェラテやキャラメル系のような印象になりやすく、

砂糖や黒糖ともよく合います。

山麓園でも熊本産一番茶を焙煎・粉砕して、ほうじ茶ソフトクリームを作ったことがあります。

一番茶の味の厚みと焙煎香があるため、乳製品の中でも茶の存在感が残りました。

ミルクティー

紅茶は、

香り・渋味・コク

が牛乳と合います。

特にアッサムのように味が強い紅茶は、牛乳を加えても茶の味が残りやすいため、ミルクティーやチャイによく使われます。

同じ「ミルクに合うお茶」でも、

香ばしさならほうじ茶。

華やかさとコクなら紅茶。

という違いがあります。


食事に合わせるなら、どちら?

これは料理によります。

ほうじ茶は香ばしく、渋味が比較的穏やかなため、

  • 和食
  • 焼き魚
  • おにぎり
  • 和菓子
  • あんこ
  • 食後のお茶

などと合わせやすいお茶です。

紅茶は、

  • ケーキ
  • 焼き菓子
  • パン
  • チョコレート
  • フルーツ
  • サンドイッチ

などと相性がよく、香りの強い紅茶ならそれ自体を楽しむ飲み方もできます。

ただし和紅茶のように渋味の穏やかな紅茶なら、和食の食中茶として楽しむこともできます。


高温のお湯が向いているのは共通

製法はまったく違いますが、

ほうじ茶と紅茶には一つ大きな共通点があります。

それは、

高めの温度のお湯で淹れやすいこと。

農林水産省では、ほうじ茶・玄米茶・紅茶などについて、

90~100℃程度のお湯

を使う淹れ方を紹介しています。

ほうじ茶は高温で香ばしさが立ちやすく、

紅茶も高温のお湯を使うことで香りと味をしっかり引き出せます。

煎茶のように、

「70℃まで冷まして……」

と細かく考えなくてもよいため、

どちらも家庭で比較的淹れやすいお茶です。


ほうじ茶と紅茶、どちらが「体に良い」?

これは単純に、

どちらが上とは言えません。

どちらもチャノキを原料とするお茶ですが、製造工程が違うため、成分構成も変わります。

そして、

「健康のためなら必ずほうじ茶」

「紅茶の方が健康に良い」

という比較をするより、

味やカフェイン量、飲む時間、食事との組み合わせで選ぶ

方が現実的です。

毎日無理なく飲めることも、お茶を楽しむうえでは大切です。


茶商から見ると、実は「似ている部分」もある

ほうじ茶と紅茶は、製法としてはかなり違います。

それでも実際にお茶を扱っていると、

意外な共通点もあります。

どちらも、

香りの作り方がおいしさを大きく左右するお茶

です。

煎茶では、旨味・渋味・香り・水色など全体のバランスを見ます。

一方、

ほうじ茶では、

どこまで焙煎して香りを作るか。

紅茶では、

どこまで萎凋・酸化を進めて香りを作るか。

が非常に重要です。

原料が良くても、製造が合わなければ魅力は十分に出ません。

逆に、原料と製法がうまく合えば、

同じチャノキとは思えないほど違う香りを作ることができます。

これがお茶づくりの面白さです。


よくある質問

ほうじ茶と紅茶は同じ茶葉ですか?

どちらもチャノキ(Camellia sinensis)の葉から作ることができます。

ただし、実際には使用する品種や茶期、原料部位などが異なる場合があります。

ほうじ茶は紅茶を焙煎したものですか?

違います。

ほうじ茶は基本的に緑茶を焙煎したものです。

紅茶は生葉を萎凋・揉捻し、十分に酸化させて作ります。

ほうじ茶は緑茶ですか?

はい。

見た目は茶色ですが、緑茶の一種です。

紅茶の「発酵」は微生物による発酵ですか?

一般的な紅茶製造では、主に茶葉自身の酸化酵素による反応です。

納豆やヨーグルトのような微生物発酵とは異なります。

カフェインはどちらが多い?

日本食品標準成分表の浸出液では、ほうじ茶20mg/100ml、紅茶30mg/100mlです。

ただし抽出条件や商品によって変わります。

夜飲むならほうじ茶の方がいい?

標準成分表では紅茶よりカフェイン量が低いですが、ほうじ茶もカフェインゼロではありません。

カフェインに敏感な方は、飲む量や時間帯にも注意してください。


まとめ|同じチャノキでも「焙煎」と「酸化」でまったく違うお茶になる

ほうじ茶と紅茶。

見た目も香りも味も違いますが、

どちらも同じチャノキから作ることができます。

大きな違いは製法です。

ほうじ茶は、

酸化を止めて作った緑茶を、さらに強く焙煎する。

紅茶は、

生葉をしおれさせ、揉み、酸化を十分に進めてから乾燥する。

その結果、

ほうじ茶には、

ナッツやトーストのような香ばしい焙煎香。

紅茶には、

花や果実、蜂蜜などを思わせる華やかな香り。

が生まれます。

同じ茶の木から、

緑茶にも、ほうじ茶にも、紅茶にもなる。

これは、日本茶を知れば知るほど面白く感じる部分です。

もし普段ほうじ茶を飲んでいるなら、次は和紅茶を。

紅茶が好きなら、少し上質な一番茶ほうじ茶を。

飲み比べてみると、

「同じお茶の葉から、どうしてこんなに違うのだろう?」

という、お茶そのものの面白さを感じられると思います。


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主な参考資料

農林水産省「味わいや香りもさまざまなお茶の種類」

農林水産省「お茶大国、ニッポン。」

文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

農林水産省「カフェインの過剰摂取について」

水上裕造・澤井祐典・山口優一「ほうじ茶の香気に関与する成分の分析」茶業研究報告, 2008

川上美智子・山西貞「焙焼、釜炒り操作による茶香気の形成」日本農芸化学会誌, 1999

お茶の山麓園

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