「一番茶は旨味が強く、二番茶や三番茶になるほど渋味が強くなる」と聞いたことがある方も多いかもしれません。
では、実際に成分を測ると、どのくらい違うのでしょうか。
山麓園では2026年、一番茶の抹茶原料「延寿プレミアム」と、熊本県産の三番茶を粉末にした粉末緑茶について、茶成分分析計で成分を測定しました。
結果は非常にはっきりしていました。
今回の比較で分かったこと
・テアニン:一番茶抹茶 3.5% / 三番茶粉末緑茶 0.4%
・遊離アミノ酸:一番茶抹茶 6.0% / 三番茶粉末緑茶 1.2%
・タンニン:一番茶抹茶 6.2% / 三番茶粉末緑茶 16.1%
・繊維:一番茶抹茶 18.7% / 三番茶粉末緑茶 24.6%
一番茶はテアニンや遊離アミノ酸が多く、三番茶ではタンニンや繊維が多い。
つまり、単純に「一番茶が上、三番茶が下」と考えるだけでは、お茶の違いを十分に説明できません。
何を重視するかによって、適した茶葉は変わります。
一番茶は、冬を越した茶樹から春に最初に伸びた新芽を摘んで作るお茶です。一般に4月から5月頃に摘採され、「新茶」として販売されるお茶も一番茶です。
二番茶は一番茶の摘採後に再び伸びた芽、三番茶はさらにその後、夏に伸びた芽を摘採して作ります。
茶期が進むにつれて気温や日照量が増え、葉も成熟していきます。そのため、一番茶・二番茶・三番茶では、味だけでなく化学成分のバランスにも違いが生まれます。
山麓園ではすでに、「抹茶は一番茶と二番茶で何が違う?8検体の成分分析で分かったこと」で、一番茶5検体と二番茶3検体を比較しています。
今回の記事では、さらに茶期が進んだ三番茶と一番茶を比較します。
今回比較した原料は次の2種類です。
| 測定項目 | 一番茶抹茶原料 延寿プレミアム | 三番茶粉末緑茶 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 全窒素 | 6.9% | 4.1% | 一番茶が高い |
| 遊離アミノ酸 | 6.0% | 1.2% | 一番茶が5倍 |
| テアニン | 3.5% | 0.4% | 一番茶が約8.8倍 |
| 繊維 | 18.7% | 24.6% | 三番茶が高い |
| タンニン | 6.2% | 16.1% | 三番茶が約2.6倍 |
| ビタミンC | 0.43% | 0.41% | ほぼ同程度 |
※山麓園による2026年の測定値です。現在販売するすべての商品に共通する保証成分値ではありません。原料、品種、茶園、被覆、摘採時期、製造条件などにより数値は変動します。
今回、特に大きな差が出たのがテアニンです。
一番茶の延寿プレミアムは3.5%、三番茶粉末緑茶は0.4%でした。
単純に比べると、一番茶のテアニン値は三番茶の約8.8倍です。
テアニンは茶に含まれるアミノ酸の一種で、日本茶の旨味やまろやかな味わいに深く関係しています。また、リラックス、ストレス反応、注意・認知機能などとの関係について研究されている成分でもあります。
今回の遊離アミノ酸全体でも、一番茶は6.0%、三番茶は1.2%と5倍の差がありました。
この結果を見ると、旨味やテアニンを重視する場合は、一番茶が非常に分かりやすい選択肢といえます。
一方、逆の結果になったのがタンニンです。
一番茶抹茶原料は6.2%、三番茶粉末緑茶は16.1%。
今回の三番茶は、一番茶のおよそ2.6倍のタンニン値でした。
茶のタンニンは、苦味・渋味に大きく関わります。そのため、タンニンが多い三番茶は、一番茶と比べて力強い苦渋味が出やすくなります。
古くから行われている日本茶の研究でも、一番茶から二番茶・三番茶へ摘採時期が進むにつれて、テアニンや全窒素が減少し、タンニンが増える傾向が報告されています。
今回の山麓園の測定結果も、こうした茶期による一般的な傾向と同じ方向を示しました。
ここは誤解しやすいため、明確に分けて考える必要があります。
今回測定した「タンニン16.1%」は、EGCGを単独で測定した値ではありません。
緑茶には、EGCG(エピガロカテキンガレート)をはじめ、EGC、ECG、ECなど複数のカテキン類が含まれています。
茶成分分析計の「タンニン」は、カテキン類を中心とした苦味・渋味成分の目安として見る数値であり、EGCGだけの含有量とは異なります。
今回のデータから直接いえること
一番茶は「テアニン・遊離アミノ酸が多い」。
三番茶は「タンニン値が高い」。
三番茶のEGCG含有量が一番茶より何倍多いかを知るには、EGCGを個別に分析する必要があります。
それでも、カテキン類やポリフェノール系の成分に関心がある方にとって、タンニン値の高い三番茶は興味深い原料といえます。
抹茶や粉末緑茶は茶葉そのものを粉末にして飲むため、2g使用した場合の単純換算も見てみましょう。
| 2g当たりの単純換算 | 一番茶抹茶 | 三番茶粉末緑茶 |
|---|---|---|
| 遊離アミノ酸 | 約120mg | 約24mg |
| テアニン | 約70mg | 約8mg |
| タンニン換算 | 約124mg | 約322mg |
| 繊維 | 約374mg | 約492mg |
※分析値を2gに単純換算した計算値です。タンニン換算値はEGCG量を示すものではありません。
このように実際の一杯に近い量へ換算すると、一番茶と三番茶では目的となる成分の方向性がかなり違うことが分かります。
一番茶と三番茶では市場価格にも大きな差があります。そのため、三番茶というと「安い原料」「一番茶より品質が低いお茶」という印象を持たれがちです。
飲用茶として旨味、香り、まろやかさを評価するなら、一番茶が有利なのは確かです。
しかし、粉末緑茶として考えると見方が変わります。
三番茶には、今回のようにタンニンや繊維が多い原料があります。苦渋味も強いため、そのまま薄茶のように点てる用途には向きにくい一方で、毎日の粉末緑茶、食品への混合、業務用原料などでは特徴を生かすことができます。
一番茶と三番茶は、単純な上下関係ではなく、成分と用途が違う原料と考える方が実態に近いでしょう。
| 重視するもの | 選びやすい茶期 | 理由 |
|---|---|---|
| 旨味・まろやかさ | 一番茶 | 遊離アミノ酸・テアニンが多い |
| テアニンを意識したい | 一番茶 | 今回の実測値では3.5%対0.4% |
| 苦味・渋味の強さ | 三番茶 | タンニン値が高い |
| タンニン・カテキン系成分に関心 | 三番茶も有力 | 今回のタンニン値は16.1% |
| そのまま点てて味わう | 一番茶 | 旨味が多く渋味が比較的少ない |
| 価格を抑えた粉末原料 | 三番茶 | 用途に合わせれば特性を生かせる |
今回の記事で最も注意したい点です。
比較した一番茶と三番茶は、同じ茶園・同じ品種・同じ栽培条件で、摘採時期だけを変えた試験ではありません。
一番茶は延寿プレミアムの抹茶原料、三番茶は「さえみどり・さやまかおり・やぶきた」を配合した粉末緑茶です。
つまり、今回の差には、茶期だけでなく、品種、茶園、被覆、施肥、芽の成熟度、製造条件などの違いも含まれます。
したがって、「すべての一番茶はテアニン3.5%」「すべての三番茶はタンニン16.1%」という意味ではありません。
実際、山麓園が過去に扱った知覧産原料では、一番茶と二番茶の成分差が小さい年・ロットもありました。
詳しくは、「知覧抹茶『藤』と『葵』はどちらを選ぶ?679件の評価と成分データで分かった目的別の答え」でも紹介しています。
茶期には確かな傾向があります。しかし、個々のお茶を判断するには、実際の成分値と実際の味を見ることが重要です。
一番茶、二番茶、三番茶の成分差は、以前から茶の研究でも調べられています。
日本茶業技術協会の「静岡茶のテアニンおよびグルタミン酸含有量について」では、静岡県の代表的な20地区の一番茶・二番茶・三番茶を調査し、摘採時期が遅くなるほど全窒素やテアニンが減少し、タンニンが増加する傾向が報告されています。
特にテアニンは、摘採時期が遅くなるほど大きく減少したとされています。
今回の山麓園の2026年実測値でも、一番茶のテアニン3.5%に対して三番茶0.4%と、大きな差が確認されました。
一方で、研究でも産地・茶園による差があることが示されています。茶期は重要な要因ですが、それだけですべてが決まるわけではありません。
山麓園では2026年、一番茶と二番茶についても複数検体を比較しています。
一番茶5検体平均と二番茶3検体平均では、テアニンは2.98%対1.90%、タンニンは7.02%対9.90%でした。
今回の一番茶と三番茶では、テアニン3.5%対0.4%、タンニン6.2%対16.1%です。
個別の原料比較なので単純につなげて「茶期ごとの平均」とすることはできませんが、全体として見ると、
という違いが見えてきます。
一番茶と二番茶の詳しい比較は、「抹茶は一番茶と二番茶で何が違う?8検体の成分分析で分かったこと」をご覧ください。
2026年に山麓園が測定した一番茶抹茶原料と三番茶粉末緑茶では、成分の方向性に大きな違いがありました。
味や旨味、テアニンを重視するなら一番茶。
タンニンやカテキン系の成分に関心があり、苦渋味のある力強い粉末緑茶を求めるなら三番茶も興味深い選択肢です。
ただし、タンニン値はEGCG単独の値ではありません。また、今回の2原料は品種や栽培条件も異なるため、成分差のすべてを茶期だけの影響と断定することもできません。
だからこそ山麓園では、「一番茶だから良い」「三番茶だから悪い」と茶期名だけで判断せず、味、色、香り、用途、そして実際の成分値を確認して原料を評価することが大切だと考えています。
執筆・分析:株式会社山麓園 甲斐宣史
本記事の成分値は、山麓園が2026年に測定した個別原料の自社測定値です。現在販売中の商品すべてに共通する保証成分値ではありません。茶葉の成分は品種、茶園、被覆、施肥、気象条件、摘採時期、芽の成熟度、製造・保管条件などによって変動します。「タンニン」は茶成分分析計の測定項目で、EGCGなど個別カテキンの定量値ではありません。テアニンやカテキン類に関する説明は一般的な研究情報であり、特定の商品による疾病の予防・治療その他の健康効果を保証するものではありません。