2021年 お茶(日本茶)生産量 日本一は鹿児島県になる?! 静岡県の首位陥落か?検証!

日本茶の生産量は、2020年までずっと静岡県が1位

写真:静岡県富士市

令和2年(2020年) お茶生産量ランキング

順位 府県名 年間生産量(トン)
1 静岡県 25,200
2 鹿児島県 23,900
3 三重県 5,080
4 宮崎県 3,060
5 京都府 2,360
6 福岡県 1,600
7 奈良県 1,490
8 佐賀県 1,140
9 熊本県 1,120
10 埼玉県 754

出典:農林水産統計 令和3年2月19日公表

令和2年の全国のお茶の生産量は、合計で69800トンとなっています。

3位の三重県は、5080トンに対し、1位の静岡県や2位の鹿児島県の生産量は、25200トン、23900トンと3位以降と数倍以上の差があることから、2021年以降もお茶の生産量1位は、静岡県か鹿児島県のどちらかになる見込みです。

2020年の静岡県と鹿児島県のお茶生産量についてのまとめ

2020年のお茶生産量は、1位の静岡県が25200トン、2位の鹿児島県23900トンと量にして1300トン、割合にすると5%の僅差でした。2019年から天候不順や生産者の意欲低下などが原因で記録的な減産が続く中、2020年は、天候不順だけでなく、コロナウイルスの影響もあり、3番茶、4番茶が限られた工場のみ生産するなど、大幅な生産自粛、減産体制が敷かれました。鹿児島県は、静岡県と比べて、2番茶以降の生産量の割合も大きいことから、生産自粛がなければ、生産量においても、おそらく鹿児島県がわずかに静岡県を上回る結果となるはずだったでしょう。

2021年は、鹿児島県がお茶の生産量ナンバーワンになる公算が高い

さて、2021年生産量の現況はどうなのか?

4月は、ほとんどが晴となり、4月11日頃から急激に寒くなり、全国的に霜害が発生、宇治茶で知られる関西では、特に大きな被害を受けたそうです。霜にやられるとせっかく新芽が枯れてしまいます。また、霜で枯れなくとも影響を受けると、新芽が硬くなり生育に悪影響を及ぼします。それで、全国的に一番茶の生産量が落ち込むことになったようです。

令和3年 静岡県の一番茶はどうだったか?

静岡県は、昨年にも増して、約2割減とまたしても大幅な減産となりました。平均単価は2割以上に上がったため、農家さんの売上は1割程上がっているようです。(静岡新聞より)静岡県では、雨の日はお茶を摘まないといいます。4月ほとんど晴れたおかげで、毎日お茶を摘むことができ、また気温が低かったため、新芽の生育も抑えられました。結果、硬く大きくなる前に摘むことで、量は減っても質が上がり、単価が上がったという結果です。(鹿児島県では、桜島の火山灰が茶葉に付着した際、洗って乾燥する設備があるので、雨の日でも摘みます)

鹿児島県の新茶(一番茶)は?

一方、鹿児島県(JA経済連ちゃぴおん情報)では、2021年は、本茶は6%減少、単価は18%上昇という結果でした。4月6日より知覧茶で知られる南九州市や、枕崎市などが新茶の最盛期に入り、その頃はまだ、寒の影響は受けていませんでした。4月10日頃までは、昨年よりも単価が低く、このまま単価が低空飛行になると思われていましたが、全国的な霜害などが起こると、平均価格が下がらなくなり、結果として単価18%増しとなったようです。

令和3年産一番茶 静岡県と鹿児島県のデータ

静岡県の一番茶生産/前年対比  ※下の表は、㈱静岡茶市場の取扱量であって、静岡県全体の総生産量ではありません。

静岡茶市場 2021年(令和3年) 2020年(令和2年) 前年対比
数量 792トン 859トン 92%
平均単価 1692円 1449円 116%

出典:静岡茶市場 令和3年取引実績表(2/1~5/31)

鹿児島県の一番茶生産/前年対比  ※下の表は、JA経済連の市場(ちゃぴおん)の取扱量であって、鹿児島県の総生産量ではありません。

鹿児島茶市場 2021年(令和3年) 2020年(令和2年) 前年対比
数量 3,120トン 3,333トン 94%
平均単価 1,916円 1,621円 118%

出典:ちゃぴおん情報 JA経済連茶事業部 5/31報

2番茶以降はどうか?

静岡県産の二番茶について

6月29日現在のところ、静岡茶市場の流通量は堅調のようです。2020年の取引実績は、6月29日時点で、約1400トンでした。ところが、2021年は、およそ1720トン前後となり、2割以上増しで、これはほぼ2019年の取引量と同じになります。

静岡県全体の茶生産量が大幅に回復しているかは、分かりませんが静岡茶市場の実績を見る限りは順調のようです。

鹿児島県の二番茶の状況

二番茶取引実績(7月19日 二番茶取引終了)
2021年(令和3年) 2020年(令和2年) 前年対比
数量 2,503トン 2,730トン 92%
平均単価 899円 494円 182%

出典:ちゃぴおん情報 JA経済連 茶事業部 第15報 (7/19)

二番茶の取引量が8%減っていますが、単価が昨年の1.8倍以上と大幅に価格が上昇しています。余談になりますが、ここまで値上がりすると、小売価格の決まっている多くの業者さんにとっては、かなり厳しい状況と言えるでしょう。ドラッグストア、量販店に納品している業者さんは、苦戦の年です。

過去10年で最も高い水準なっていると言われていることから、おそらく大手ドリンクメーカーさんが原料確保のため、(市場や問屋を通さず)生産者から直買いすることで、市場への上場が減っていることも考えられます。

そう考えると、市場の上場量は昨年を8%下回っても、実際の生産量はそこまでは減っていない可能性もあります。

・参考:一番茶と二番茶の違いについて

三番茶の近況(8/18現在) 追記更新

令和3年(8/17現在) 令和2年(最終) 令和1年(最終) 本年・R1年対比
数量 1624トン 625トン 2026 80%
平均単価 551円 337円 358 154%

出典:ちゃぴおん情報 第19報 R3. 8. 18

市場の三番茶取扱量は、既に2020年を超えましたが、例年よりも少ないようです。三番茶も終盤なため、これからそれほど増える見込みはありません。今年の市場流通量は、80%(2019年対比)が市場の取引実績になります。(2020年は大幅な生産調整が行われ、参考としては相応しくないため、2019年を比較対象としました)

データだけを見ると、2019年比2割程減少しているように見えますが、どうやら大手さんがドリンク用の茶葉を農家さんから直買いしていて、市場への持ち込みが減っているようです。

単価は、昨年対比154%と高止まりしている状況です。

四番茶の市場取引実績(10月3日更新)

令和3年(8/17現在) 令和2年(最終) 昨年対比
数量 279トン 159トン 174%
平均単価 536円 368円 146%

既に四番茶の生産も終了し、今年は279トン、令和1年は最終で173トン、令和2年で159トンという結果となりました。4番茶の生産は、生産調整のあった昨年よりも174%増し、例年と比べても増加しています。四番茶以降の収量は、秋冬番茶を残すのみになります。

まとめ 静岡県が1位の座を譲る?

結論:2021年はよほどのことが起こらない限り、鹿児島県がお茶の生産量1位となるか? しかし、まだわからない。

静岡県は前述の通り、1番茶の生産割合が1年全体の4割近を占め、その一番茶が2割減少。一方、鹿児島県は、1番茶の割合が3割と低く、減少量も6%程度と静岡県に比べても少なめにとどまっている。

7月下旬にはオリンピックが控えており、外国人観光客は見込めなくとも、一定の消費量は見込まれているようです。少なくとも、大手さんがたくさん買い入れてようです。(噂ですが、某大手ドリンクメーカーさんが、昨年の数倍ほど買い付けているのではないかと言われています。相場が上がっている要因にもなっています)

昨年の鹿児島茶は、三番茶に生産調整が入り、三番茶が約半分程しか生産されませんでした。今年は、前述の通り二番茶の価格が高値で推移し、高すぎて十分に仕入れられていない業者さんが多数なので、三番茶の高騰は必須で、生産調整が入ることはまずないでしょう。また、一番茶が例年よりも早く、三番茶以降も単価が上がると予想されるため、四番茶の生産量も増加すると思われます。

二番茶以降が大きな問題なくこのまま順調に進めば、鹿児島県がお茶の生産量にて静岡県を抜き、全国1位になる可能性は非常に高いと言えます。

しかし、毎年のことながら、農産物は天の恵みのため、この後何が起こるかわかりません。鹿児島県が二番茶の最盛期に梅雨に突入し、鹿児島茶市場の取扱量が減ったり、逆に静岡茶市場の二番茶取扱量が急激に回復していることから、大方の予想を覆すことになるかもしれません。いずれにせよ、茶の需要も増していますので、全国の農家さんの奮闘に期待し、茶の生産量の減少に歯止めがかかることを祈っております。

10月3日追記

農林水産省統計によると、令和2年の秋冬番茶は、5880トン、令和元年で6920トンとなっています。秋冬番茶の収量は、令和元年までは毎年増加しており、今後順調なら今年は7000トン前後を見込めるのではないかと思います。(※鹿児島県全体の生産量で、市場の取引量ではありません)

気になる2021年の日本茶生産量一位の座は、静岡県か鹿児島県なのか、結果は2022年2月頃に発表される農林水産省の統計を待つところです。

お茶の山麓園