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ほうじ茶に油が浮くのはなぜ?飲んでも大丈夫?茶商が原因を解説

ほうじ茶を淹れたとき、

「表面に油みたいなものが浮いている」

「キラキラした膜ができた」

「茶葉から油が出ているの?」

と驚いたことはないでしょうか。

見た目だけを見ると、

「傷んでいるのでは?」

「何か異物が混ざった?」

と心配になるかもしれません。

しかし、まず知っておきたいのは、

ほうじ茶の表面に見える“油膜”は、本当の油ではない場合がある

ということです。

実際、農研機構では、お茶の表面にできる「油膜様物質」について研究しています。

その結果、

茶葉に含まれるポリフェノールと、水に含まれるカルシウムなどが反応してできる膜

である可能性が示されています。

特に、

・硬度の高い水を使う
・お茶を煮出す
・高温のまま長く保温する

といった条件が重なると生じやすくなります。

つまり、

「ほうじ茶から油が出てきた」とは限らない

のです。


結論|ほうじ茶の表面の油膜は「油ではない」ことがある

最初に結論をまとめます。

ほうじ茶の表面に浮かぶ油のような膜は、

茶ポリフェノールと水中のカルシウムなどが関係して作られる「油膜様物質」

であることがあります。

研究では、このような膜は「scum(スカム)」とも呼ばれています。

農研機構ではウーロン茶を中心に調査していますが、

同じ条件では、ほうじ茶・紅茶・緑茶でも油膜様物質が生成する

としています。

ですので、

正常な茶葉を普通に抽出していて、

・腐ったような臭いがしない
・洗剤や石油のような異臭がしない
・容器に油汚れがない

という場合、

表面に膜があるというだけで、

「異物が混入した」「茶葉が腐っている」と判断する必要はありません。


そもそも、あの膜は何?

お茶の表面を見ると、

虹色に光ったり、

薄い膜が張ったり、

細かな模様のように見えたりすることがあります。

見た目が油によく似ているため、

「茶葉の油分が浮いている」

と思われがちです。

しかし農研機構の研究では、

この油膜様物質は、

茶ポリフェノールとカルシウムを主成分とする高分子物質

ではないかと推定されています。

つまり、

料理に浮くサラダ油や脂肪のような「油」とは性質が違います。


なぜカルシウムで膜ができる?

お茶には、

カテキンなどのポリフェノールが含まれています。

一方、水道水やミネラルウォーターには、

カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが含まれています。

特にカルシウムの多い水を使い、

高温で茶を抽出して、そのまま保温すると、

茶のポリフェノールとカルシウムが関係した物質が表面に集まり、

膜のように見えることがあります。

研究では、

カルシウムを含む弱アルカリ性の水中で、茶カテキンを約80℃に保つとスカムが生成した

と報告されています。

農研機構の実験でも、

硬水で煮沸した茶を80℃程度で保温すると多く生成し、

蒸留水では生成しなかったとされています。

ここがかなり重要です。

つまり、

茶葉だけの問題ではなく、「水」と「淹れ方」も関係する

のです。


ほうじ茶で見つけやすい理由

「でも、煎茶ではあまり見ないのに、ほうじ茶では見たことがある」

という方もいるでしょう。

これには飲み方の違いも関係している可能性があります。

ほうじ茶は、

・熱湯で淹れる
・やかんで煮出す
・ティーバッグを煮出す
・ポットで保温する

という飲み方をされることがあります。

一方、煎茶は急須で淹れて、比較的すぐに飲むことが多いお茶です。

農研機構も、

緑茶や紅茶で油膜様物質があまり問題にならない理由の一つとして、

抽出方法・提供方法の違い

を挙げています。

そのため、

「ほうじ茶には油が多いから膜ができる」

と考えるより、

ほうじ茶は高温で煮出したり保温したりすることがあるため、膜ができる条件が揃いやすい

と考える方が分かりやすいでしょう。


焙煎したから油が出たわけではない?

ほうじ茶は強い火で焙煎して作ります。

そのため、

「焙煎したことで茶葉の油が染み出したのでは?」

と考えるのも自然です。

しかし、

表面に見える油膜様物質については、

焙煎された油が浮いていると説明するより、茶ポリフェノールと水中成分によるスカムの形成をまず考えるべき

です。

ほうじ茶の焙煎では、茶葉中の糖やアミノ酸などが加熱によって反応し、

ピラジン類、フラン類、ピロール類などの香気成分が生まれます。

これが、ナッツやトースト、炒った穀物のような独特の焙じ香につながります。

つまり、

「焙煎香が強い」ことと、「表面に油が浮く」ことは別に考えた方がよい

ということです。


飲んでも大丈夫?

一番気になるのはここだと思います。

農研機構の研究では、

油膜様物質は異物混入ではなく、

茶のポリフェノールとカルシウムなどから生じるものと推定されています。

そのため、

通常の茶葉を清潔な器具で抽出し、一般的な油膜様物質ができただけであれば、それだけを理由に危険な飲み物になったとは考えにくい

でしょう。

ただし、農研機構は、

油膜様物質が多く発生する抽出条件では、

見た目だけでなく香味も低下するため、できるだけ発生させない方がよい

としています。

「飲めるかどうか」と、

「おいしいかどうか」は別ということです。


こんな場合は飲まない方がよい

一方で、

「表面に膜があるものは全部大丈夫」

という意味ではありません。

次のような場合は、油膜様物質とは別の問題を考えた方がよいでしょう。

洗剤のような臭いがする

ポット、急須、タンブラーなどに洗剤が残っている可能性があります。

特に茶の味とは明らかに異なる、

洗剤や香料のような臭いがする場合は飲まず、

容器を十分に洗浄してください。

油料理に使った容器を使った

鍋やポットに食用油が残っていれば、

当然、本物の油が浮く場合があります。

膜ができた原因が茶なのか容器なのか判断しにくい場合は、

別の清潔な容器で同じ茶葉を淹れ直すと分かりやすくなります。

酸っぱい・腐敗したような異臭がする

作り置きしたお茶を長時間常温に置いていた場合など、

微生物による変敗の可能性も考える必要があります。

油膜の有無だけでなく、

臭い・味・保存時間

も確認してください。

石油や薬品のような明らかな異臭がある

これは通常の茶の油膜様物質として説明できません。

飲用を避け、茶葉・水・使用器具を確認してください。


油膜を出にくくする方法

気になる場合は、淹れ方を少し変えるだけでも改善できる可能性があります。

1.カルシウムの少ない水を使う

研究では、カルシウム濃度の高い水ほど油膜様物質ができやすいことが示されています。

ミネラル分の多い硬水を使っている場合は、

より軟らかい水で試してみると違いが分かることがあります。

2.必要以上に煮出さない

ほうじ茶は高温のお湯と相性のよいお茶ですが、

長時間ぐつぐつ煮続ければよいわけではありません。

香りも飛びやすくなり、

味も重たくなります。

3.高温のまま長時間保温しない

研究では、煮沸後に80℃程度で保温した場合に油膜様物質が生成しやすくなりました。

作ったほうじ茶を何時間も高温のまま置くより、

飲む分だけ作る方がおすすめです。

4.冷やす場合は早めに冷却する

農研機構では、

煮出した茶をすぐに冷却すると、油膜様物質の生成が抑えられたと報告しています。

水出し・冷茶として保存したい場合は、

煮出した後いつまでも常温で放置せず、

粗熱を取って早めに冷蔵する方がよいでしょう。


水道水なら必ず出る?

いいえ。

油膜様物質の生成は、

・水中のカルシウム量
・pH
・茶葉に含まれるポリフェノール
・抽出温度
・保温時間

など複数の条件に左右されます。

そのため、

同じほうじ茶でも、

「家では出るのに職場では出ない」

「ミネラルウォーターを変えたら出なくなった」

といったことは十分起こり得ます。

茶葉そのものだけが原因ではないためです。


急須の縁に茶色い膜が付くのも同じ?

似た現象である可能性があります。

お茶を飲んだ後、

カップやポットの水面付近に、

茶色い輪のような汚れが残ることがあります。

茶のポリフェノールや水中のミネラルなどが関係して付着している場合があります。

時間が経つと落ちにくくなるため、

飲み終わったら早めに洗うのがおすすめです。


そもそも、ほうじ茶はなぜ香ばしい?

油膜とは直接関係ありませんが、

ほうじ茶の最大の特徴は、やはり焙煎香です。

ほうじ茶は、

煎茶・番茶・茎などの緑茶を強く焙煎して作ります。

焙煎によって、

ピラジン類、フラン類、ピロール類などの香気成分が生成し、

独特の香ばしさが生まれます。

山麓園でも、熊本県産一番茶を自家焙煎してほうじ茶を作っています。

同じ原料でも焙煎温度や排出するタイミングを変えるだけで、

香ばしさと緑茶由来の味の残り方は大きく変わります。

→ 関連記事
「ほうじ茶とは?原料・焙煎・香り・番茶との違いをお茶屋が解説」
https://tea-sanrokuen.com/wp/hojicha-what-is-hojicha


「油膜がある=品質が悪い」ではない

ここも誤解されやすいところです。

油膜様物質ができるかどうかは、

茶葉の価格や品質だけで決まるものではありません。

高級なほうじ茶でも、

水質や抽出条件によっては発生する可能性があります。

逆に、

油膜が出ないから高品質というわけでもありません。

ですので、

油膜の有無だけで、

「このほうじ茶は古い」

「品質が悪い」

「油を添加している」

などと判断するのは適切ではありません。


よくある質問

ほうじ茶に本当に油は含まれていない?

茶葉には植物由来の脂質やワックス状成分も存在します。

ただし、飲用したほうじ茶の表面に見える膜については、

研究で確認されている「茶ポリフェノールとカルシウムなどによる油膜様物質」が原因となっている場合があります。

そのため、

「膜が見える=茶葉の油が溶け出した」

とは限りません。

ティーバッグでも油膜はできますか?

できます。

原因がティーバッグかリーフかではなく、

茶の成分、水質、温度、保温時間などの条件によって生成するためです。

水出しなら出にくい?

高温条件の方が油膜様物質は生成しやすいため、

低温抽出では生じにくいと考えられます。

農研機構の試験でも、30℃で抽出・保温した場合は、高温条件より生成が抑えられました。

煮出したほうじ茶に膜が出ました。捨てるべき?

異臭や容器の油汚れなど別の問題がなく、

通常の油膜様物質と考えられる場合は、

膜があることだけで異物混入や腐敗を意味するわけではありません。

ただし、香味は低下しやすいため、

次回は水や煮出し時間、保温時間を変えてみるのがおすすめです。

ほうじ茶特有の現象ですか?

いいえ。

農研機構では、同様の条件で、

ほうじ茶だけでなく、

緑茶・紅茶にも油膜様物質が生成するとしています。


まとめ|ほうじ茶に浮く「油」は、油ではないことがある

ほうじ茶の表面に、

キラキラした油のような膜が浮いていると、

少し不安になるかもしれません。

しかし、研究では、

茶ポリフェノールと水中のカルシウムなどが反応してできる「油膜様物質」

が確認されています。

特に、

・カルシウムの多い水
・煮出し
・高温での長時間保温

といった条件で生じやすくなります。

つまり、

ほうじ茶の表面に膜がある=油が混入している、腐っている

とは限りません。

気になる場合は、

水を変える、煮出しすぎない、高温で長時間保温しない、といった方法を試してみてください。

そして何より、

ほうじ茶のおいしさの中心は「油」ではなく、

高温焙煎によって生まれる香ばしい香りです。

見た目に少し驚く現象でも、

仕組みを知れば、

「なぜこうなるのだろう?」

というお茶の面白さの一つに変わるのではないでしょうか。


関連記事

「ほうじ茶とは?原料・焙煎・香り・番茶との違いをお茶屋が解説」
https://tea-sanrokuen.com/wp/hojicha-what-is-hojicha

「ほうじ茶と紅茶の違いは?原料・製法・味・カフェインを茶商が解説」
https://tea-sanrokuen.com/wp/archives/3105


主な参考資料

農研機構「ウーロン茶浸出液表面に浮遊する油膜様物質」

堀江秀樹・氏原ともみ・木幡勝則「ウーロン茶浸出液表面に生成する油膜様物質」日本食品科学工学会誌 49巻5号, 2002

原利男・久保田悦郎「ほうじ茶の焙焼による香気成分の変化」日本食品工業学会誌, 1973

川上美智子・山西貞「焙焼、釜炒り操作による茶香気の形成」日本農芸化学会誌, 1999

お茶の山麓園