「きらり31」(Kirari31)というお茶の品種をご存じでしょうか?
まだ「やぶきた」「さえみどり」ほど広く知られている品種ではありませんが、近年、茶市場でも少しずつ見かけるようになってきた、非常に品質の高い品種です。
山麓園でも何度も茶葉を見てきましたが、個人的にはこれからさらに評価されてもよい品種のひとつだと思っています。
特に興味深いのが、その血統。
「さきみどり」×「さえみどり」
高品質品種として知られる「さえみどり」を親に持ち、旨味、色沢、収量、耐寒性などをバランスよく備えています。
味は、さえみどりのやさしく上品な旨味とは少し違い、もう少しキリッと輪郭のはっきりした旨味。
この記事では、きらり31の特徴や味、水色、さえみどり・はると34との違い、そして山麓園が考える抹茶原料としての可能性まで、実際に茶葉を見てきた立場から解説します。
「きらり31」は、宮崎県総合農業試験場茶業支場で育成された緑茶用品種です。
1994年に、
さきみどり × さえみどり
を交配して育成されました。
長期間の試験を経て、2016年に品種登録されています。
摘採時期は「やぶきた」よりやや早い早生品種。
収量も多く、早生品種としては耐寒性にも優れ、煎茶だけでなく、かぶせ茶や玉露でも高い品質を示す品種として育成されました。
つまり、単に「味がおいしい」というだけでなく、
という、生産者にとっても魅力の多い品種です。
親である「さえみどり」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
品種説明では「温和な香味」「渋味が少ない」と紹介されることの多いきらり31。
確かに、強い渋味や苦味を前面に出す品種ではありません。
ただ、山麓園で実際に飲み比べてきた印象では、さえみどりとは旨味の出方が少し違います。
さえみどりの旨味は、やさしく、丸く、上品。
口の中にふわっと広がるような、角の少ない旨味があります。
それに対して、きらり31は、
少しキリッとしていて、旨味の輪郭がはっきりしている。
そんな印象を受けます。
もちろん、産地や摘採時期、被覆、蒸し方などによって味は変わりますが、品種として比較すると、きらり31の方が少しシャープ。
さえみどりのような「やさしさ」だけでなく、もう少しお茶らしい芯のある味を求める方には、こちらの方が好みに合うこともあると思います。
きらり31の茶葉を見てまず感じるのが、色の濃さです。
良質なものは非常に濃厚な緑色をしています。
特に被覆した一番茶などでは、見た目だけでも高品質を感じるような茶葉に仕上がります。
この点は、さえみどりの血を受け継いでいることを感じさせます。
ただし、実際にお湯を注いでみると少し印象が変わります。
乾燥した茶葉では非常に濃い緑色をしているきらり31ですが、抽出した水色を見ると、さえみどりより少し黄色みを感じることがあります。
これは山麓園で実際に複数の茶葉を見てきた中での印象です。
さえみどりの上級品は、黄色みが少なく、冴えた青緑色。
見るだけでも「きれいだな」と感じるような、独特の水色があります。
きらり31も十分に色のよい品種ですが、水色の美しさだけを比較するなら、私はさえみどりの方が一段上だと考えています。
一方で、味については価格差ほど大きな差を感じません。
ここが、きらり31のおもしろいところです。
きらり31は、市場でも比較的高値で取引されることの多い品種です。
新品種として出てきた当初は希少性もあり、かなり高い価格で取引されているものを見かけました。
その後、栽培面積や流通量が増えてきたこともあり、山麓園が市場を見ている限りでは、価格も少し落ち着いてきたように感じます。
それでも、一般的な品種と比べれば高値になりやすい品種です。
ただし、現在でも「さえみどり」とは市場価格に差があります。
さえみどりは、色、水色、旨味、需要など総合的な評価が非常に高く、市場では別格ともいえる価格になることがあります。
では、きらり31の品質もその価格差ほど低いのか?
私はそうは思いません。
品質だけを見れば、さえみどりと価格差ほどの大きな差はない。
むしろ、良い原料に当たれば、非常に優れたお茶になります。
このあたりは、きらり31の大きな魅力だと思っています。
きらり31を語るうえで、もうひとつ面白い品種があります。
「はると34」です。
きらり31は、
さきみどり × さえみどり
なのに対して、はると34は、
さえみどり × さきみどり
です。
つまり、父親と母親を入れ替えた交配です。
同じ2品種を親に持ちながら、交配の方向が逆になっています。
きらり31は早生、はると34はさらに早い極早生品種として育成されています。
品質についても、両方ともかなり近いところにいると感じます。
現状では、茶市場で見かける量はきらり31の方が多い印象です。
個人的な好みまで含めて言えば、私ははると34の方をほんの少し上に見ています。
ただし、その差は小さいです。
どちらも非常に高品質で、これからさらに増えてほしいと思う品種です。
きらり31を飲んでいると、改めて「さえみどり」という品種の優秀さを感じます。
さえみどりを親に持つ品種には、きらり31だけでなく、
などがあります。
さえみどり自身が「やぶきた」と「あさつゆ」という優れた血統を持ち、さらに次世代の高品質品種を次々と生み出す親にもなっています。
山麓園でさえみどりを「お茶のサラブレッド」と表現している理由のひとつです。
きらり31も、その優秀な血を受け継ぐ代表的な品種と言えるでしょう。
日本茶の品種全体を比較したい方はこちらもご覧ください。
きらり31は、公式には煎茶、かぶせ茶、玉露などで品質に優れる品種として評価されています。
では、抹茶はどうでしょうか?
これはまだ山麓園としての評価・期待の段階ですが、私はきらり31には抹茶原料としてもかなり適性があるのではないかと考えています。
理由は、
といった特徴です。
これらは、碾茶・抹茶原料を考えるうえでも魅力があります。
特に、さえみどりの抹茶が「やさしく、上品で、まろやか」な方向だとすれば、きらり31はもう少し輪郭のある旨味を持った抹茶になる可能性があります。
抹茶ラテなど牛乳と合わせる用途でも、この少しはっきりした味がプラスに働くかもしれません。
もちろん、抹茶の品質は品種だけで決まりません。
被覆期間、摘採時期、碾茶製造、火入れ、粉砕方法などによって大きく変わります。
そのため、「きらり31だから必ず高品質な抹茶になる」とまでは言えません。
それでも、山麓園では今後の抹茶原料として非常に期待している品種のひとつです。
きらり31は、こんな方におすすめです。
特に、さえみどりを飲んだことがある方には、飲み比べていただくと違いが分かりやすいと思います。
良質なきらり31なら、まずは少し低めのお湯で旨味を楽しんでみてください。
茶葉:5~6g
お湯:約150ml
湯温:65~75℃
抽出時間:約60~90秒
低めの温度で淹れると、旨味と甘味が分かりやすくなります。
二煎目は少し高めのお湯を使い、短時間で。
一煎目とは違った爽やかさや、きらり31らしいキリッとした輪郭を感じやすくなります。
きらり31は、
さきみどり × さえみどり
から生まれた、宮崎県育成の高品質な早生品種です。
特徴をまとめると、
といった魅力があります。
水色の鮮やかさでは、私はまだ「さえみどり」の方が優れていると見ています。
市場価格についても、さえみどりの方が高い。
しかし、実際の品質を見ると、価格差ほどの差は感じません。
非常によくできた品種です。
また、親を逆にした「はると34」と品質的にも近く、個人的にははると34をわずかに上に評価していますが、流通量では現在のところきらり31の方をよく見かけます。
そして何より、煎茶だけでなく、今後は碾茶・抹茶でも面白い品種になるのではないか。
山麓園として非常に期待している品種のひとつです。
この記事は、日本茶・健康茶の製造販売を行う株式会社山麓園が、茶葉の仕入れ・製造・販売経験をもとに解説しています。お茶の魅力、健康効果などについて情報を発信。楽天やヤフーショッピングの店長としても活躍中。食前にサラダを山盛り、高温調理の食品は避け、米は玄米と決めていて健康オタクでもあります。